「できない1%の人」を捨てる組織が弱いワケ 出口治明氏と繁盛店の店主が語る「チーム論」
出口:日本の古い体質の会社では、出ていくのは裏切り者みたいに思うんですよ。そんな人を再雇用するなんてありえへんと、要するに見せしめにするんですよね。
出ていくほうは、青い鳥を探して出ていくわけです。でも、青い鳥なんていなかったということがわかって、帰ってくる。そうしたら、きっとものすごく働きますよね。合理的に考えたら、出ていくときは頑張ってこいと、いつでも帰ってきていいよと、気持ちよく送り出すほうが絶対いいんです。
帰ってこなくても別にいいし、出ていく人というのは仲間に対して申し訳ないなと思っているんだから、そこで頑張っておいでよといったら、出ていく人は自然とその会社のファンになる。そして、そのファンが帰って来れば強力な戦力になる。
せかい:はい。今までは、ずっと同じ会社で、ずっと同じ人と働くことが普通でした。でも、これからは「ゆるいつながり」で、そのつど、そのつどでチームをつくっていくことが、求められていますね。
出口:せかいさんは、見ず知らずの人、何が得意か不得意かわからない人と毎日一緒に働き、未来食堂を運営しているわけですが、そもそもなぜ特定の誰かではなく、誰とでもやっていこうと思ったんですか?
せかい:私はもともと会社員でしたので、未来食堂を開店するため、いろいろな飲食店で修業をしたのですが、思い返せば本当に“使えない人間”でした。
初日に電気コードを包丁で切ってしまったり、とあるレストランではようやく厨房に立てたと思ったのもつかの間、手際の悪さにレジ打ちに戻されたり。でもどうしても「未来食堂」を開店したい、という思いで修業を続けました。
そのときの体験から、誰であっても、スキルがないことを理由にチャレンジの機会を奪いたくないと思い、誰でも参加できる「50分働くと一食無料」という仕組みを作りました。これが、誰でも参加できる「まかない」というシステムです。
必要なのは、タスク整理ではなく仕組みづくり
出口:不特定多数の「まかない」さんと一緒に、いろいろなお客さんが次々にやってくる食堂を運営するというのは、非常にハードルが高い仕事ですよね。でも、未来食堂は実験的な食堂にとどまらず、繁盛店としてしっかり利益も生み出しています。
「まかない」さんが全員優秀だったら楽ですけれど、優秀な人はそうそういるわけではないですよね。ところが、せかいさんは「どんな人でも参加できすぐに戦力になれる」仕組みを作った。そこが面白いですよね。要するに、パズルをはめればいいわけですから。