トランプ再選に向かって神風が吹き始めた理由 民主党の大統領候補者たちの弱みが露呈か

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実は、トランプ政権の財務長官であるムニューシン氏は、カリフォルニア州でのビジネス時代に、ハリス州司法長官の捜査対象になったことがある。その訴追が実行されなかった点について、ハリス長官が手心を加えた疑いがあるというのだ。

これについては、民主党の各候補者から厳しく追及されるはずであり、ハリス氏は大統領選に立候補できないという見方もあった。しかし、前述のように、サンダース陣営のセクハラ問題との痛み分けで、追及されない可能性が強い。

このムニューシン財務長官のカリフォルニア時代の政治疑惑は、トランプ大統領にとっては、痛くもかゆくもない。

ますます興味をそそる「トランプ人事」の驚愕』(2018年12月25日配信)で予告したように、トランプ大統領としては、ムニューシン財務長官が欠けても、新たに財務長官として、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を横滑りさせることで切り抜ける算段であり、トランプ大統領と確執のあるパウエル議長には、FRBから去ってもらうことができるという読みがある。

最大のテーマ「国民皆保険」の財源問題で逆襲も

最近、ウォール街の70%がトランプ大統領の再選を予想していると、NBCテレビニュースが報じている。トランプ大統領は、民主党候補が提案する国民皆保険システムについて、その財源を徹底的に追及することを、選挙戦略の一つとして考えている。

特に、サンダース議員は、その財源のごく一部しか開示していないので、もしもサンダース氏が大統領になると、社会主義的な税制を、いきなり導入する懸念がある。トランプ大統領としては、サンダース氏は民主党予備選で、国民皆保険システムの財源の情報開示を十分に果たしていない点を追及する。

サンダース氏には、この国民皆保険の財源情報のほかにも疑問がある。今年3月上旬にメディアで大騒ぎになったのは、サンダース氏が2020年大統領選に民主党から出馬宣言した後に、2024年の自らの上院議員の座の再選に際しては、民主党からではなく、独立系で立候補すると、連邦選挙委員会(FEC)に公式記録していることだ。

2024年に独立宣言している人物が、なぜ2020年大統領選の民主党候補争いのトップクラスを疾走しているのか。これは民主党内部の矛盾の発露である。トランプ大統領は、この「トランプ大統領を倒すには手段を選ばないという、民主党の矛盾」を選挙民に明らかにすることによって、2020年大統領選はもちろん、上院下院の両選挙でも好結果を狙う戦略だ。

もしもサンダース氏が民主党議員でさえ知らないうちに、社会主義的な財源確保を考えているとすれば、資本主義者を自任するトランプ大統領としては、それを許すわけにいかない。

2020年に向けて、国民皆保険が選挙戦の中心テーマになるのは確実である。なにしろサンダース氏の案は、民主党大統領が作ったオバマ・ケアから国民皆保険に切り替えるのに、財源を十分に開示説明していないままであり、サンダース氏を中心とする民主党予備選の及び腰の展開に、トランプ大統領は内心ほくそ笑んでいるに違いない。

サンダース氏が民主党候補のトップを行く状況と、サンダース氏に財源の情報開示をいっさい迫ってこなかった民主党の矛盾を考えると、NBCテレビが報じる、ウォ―ル街の70%に当たる人々の「トランプ再選」の見方が正しいということができる。トランプ大統領は、再選への道を確実に固めつつあると言えよう。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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