日本メディアが報じない南米「PROSUR」の正体 ベネズエラ・マドゥロ包囲組織ではない?
当初から反米意識の強い政治思想が顕著だった同組織は、官僚主義的な組織体となってしまったことで、2014年以降離脱する国も増え、現在ではボリビア、スリナム、ウルグアイ、ガイアナ、ベネズエラの5カ国が残っているだけとなっている。
設立当初はブラジルとベネズエラがリーダー国として存在していたが、当時は著しい経済成長を果たしていたブラジルも、原油の輸出で繁栄していたベネズエラも、その後経済的に後退。ベネズエラは今も同組織に籍を置いてはいるが、国家は危機的状況にある。
参加国の多くが左派政権から右派政権に
こうした事情により、UNASURは実質的な活動はほぼしていない。加えて、エクアドルにある本部も、同国のモレノ大統領から撤収を求められているありさまだ。また、UNASURが誕生した頃は、参加国のリーダーの多くが左派系だったが、チリやアルゼンチン、ブラジルなど主要加盟国では、近年右派系の指導者が誕生している。
2018年にチリの投資家で富豪のピニェラが大統領に復帰した後、南米諸国の発展を目的とした組織体が不足していると感じ、視線を向けたのが「太平洋同盟(Alianza del Pacífico)」だ。この同盟はチリ、コロンビア、ペルー、メキシコ4カ国のみのこじんまりした組織だが、貿易の発展を主要目的にしてうまく機能している。
しかも、同盟には官僚主義的な影響は存在せず、組織の構造もシンプル、本部も1カ所にとどまらず、加盟国の間で順番に移動している。ピニェラ大統領はこのような組織を南米全域に発展させる必要があると感じたようだ。
そこで、組織の概要をコロンビアのドゥケ大統領に相談。コロンビアはベネズエラとは2200キロにわたって国境を分かち合っており、現在のベネズエラ危機を真正面から受けているため、ドゥケ大統領はピニェラの構想に共鳴。同組織を、リマ・グループを包括させるような形にして、ベネズエラの紛争を外部から民主的圧力を加えて問題を解決することを提案したのである。
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