「樹木希林と市原悦子」一流女優のすごい共通点

2人の名女優が私たちに教えてくれたこと

亡くなった後に出た『樹木希林120の遺言』(宝島社)を読むと、この役に関して本人のコメントがこれまた秀逸だったので、転載しておく。

「世の中でババアこそ革命を起こせる唯一の存在ってこと。男は、結局、社会的な名誉だとか栄光だとかいうものがなくっちゃ生きていかれないのよね。その点、女はただ生きていかれるというヴァイタリティが本能的にある。だから、ゴキブリと同じで、バアさんが世の中でいちばん強いと思うの。男には革命を起こそうというロマンがあるだけですよ」

まさに革命を起こしたババア役は強烈だったが、不美人芸者の生きざまを見せつけた作品もある。「夢千代日記」(1981年・NHK)である。

主役の吉永小百合は原爆症を患っている置屋の美人女将。心中の生き残りや、足の不自由な娘など、ワケあり芸者ばかりが住みこみで働いている。その中にいたのが樹木演じる菊奴だ。ここでも顔の造作をいじられるセリフがあるのだが、「芸者は芸と心で、顔や形ではない」と後輩を諭す。シビアなサスペンス風の展開の中で、コメディエンヌの才能を発揮しつつも、やはり欲望に正直な役だった。生臭い「THE・女」だったのだ。

旅芸人一座の若い役者の顔や体を舐めるようにチェックし、ボディータッチも激しい。基本的に若いイケメンが好きなのだ。そして、過剰なタニマチとしてべったりとつきまとい、さんざん貢いだ揚げ句、若い芸者と駆け落ちされるという切ない役回り。男女の機微を達観しているようでいて、実際は「うぶな女」。人の恋愛を茶化したり説教したりする割に、自分は実に単純で、しかも男を見る目がない。

こういう女の人、案外いるんだよな。「男好き」で「性欲の所在をはっきりさせた」女としても、このシリーズになくてはならない存在だった。菊奴ファンは少なくないと思う。

「性と生と死」がつねに隣り合わせ

樹木は途中から映画を主戦場としたが、2004年「向田邦子の恋文」にも触れておきたい。脚本家で作家の向田邦子の秘めた愛をドラマ化した作品だが、樹木は向田の恋人の母親役だった(向田邦子は山口智子、恋人の中原歩は大口広司が演じた)。

放送作家として多忙な日々を送る山口だが、脳卒中で右半身が不自由になった大口の家へ足しげく通い、晩酌を共にする。大口には妻子がいて、離婚が成立していない状態だ。同居している樹木は、母屋のほうからのぞき見したり、ときにはわざときんぴらを持ってきては様子をうかがう。山口が手土産に何度か持参した小豆煎餅には「歯が欠けちゃって。でもいいのいいの、もうじき死ぬんだから」と、皮肉を込めた謝礼をしれっと吐く。

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