寝台で「酒が飲めない」、シベリア鉄道最新事情 ウォッカ片手に「乗客同士の歓談」は昔の話

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シベリア鉄道を利用する客層も変わっているように思える。長距離利用はほとんど見られず、ビジネスパーソンが途中駅で乗ったり降りたりしている光景が目立つ。話を聞いてみると、「飛行機ではアクセスできない小都市に行くときにシベリア鉄道を利用する」とのこと。長距離移動は飛行機、短距離移動は鉄道という流れはロシアでも変わらないようだ。

ところで、シベリア鉄道では基本的に駅を離れるとモバイル通信ができない。そのため、多くの乗客は読書をするか眠るかのどちらかだ。「日本人とは違いロシア人は働くときは働き、休むときは休む」というのは隣のベッドに腰掛けていたロシア人ビジネスマンの弁。シベリア鉄道で航空機のようにWi-Fiサービスが始まると、ロシア人の働き方も大きく変わるかもしれない。

欠点は空港アクセス

日本の鉄道と比較すると、ロシアの鉄道にも数多くの弱点が存在する。筆者が考える最大の弱点は地方空港の鉄道アクセスだ。

「アエロエクスプレス」が出発するウラジオストク駅。シベリア鉄道の長距離列車が発着する本駅の隣にある(筆者撮影)

シベリア鉄道の起点駅であるウラジオストクを例に挙げる。ウラジオストクは人口約60万人を擁する極東ロシアを代表する都市だ。2012年にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が行われ、極東ロシアを管轄する「極東連邦管区」の行政府所在地になることも決まっている。

空の玄関口にあたるウラジオストク国際空港は2012年に改修された。旧来のロシアのイメージを覆す近代的なターミナルを備え、ロシアへのビザなし渡航が認められている韓国便を中心に多数の国際線が乗り入れる。

しかし、空港とウラジオストク駅を結ぶ「アエロエクスプレス」の本数は1日5往復しかない。しかも2019年3月現在、空港発の最終列車は17時40分のため、大半の日本発の航空便は最終列車に間に合わない。空港バスも1日10便のため、タクシーを利用するしかない。空港ターミナルには市内への交通アクセスを探す多数の日本人観光客を見かけた。こうした例はほかの都市でも見られる。空港アクセス鉄道の整備は喫緊の課題である。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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