「きかんしゃトーマス」が国連SDGsと組んだ理由 ジェンダーバランス配慮で女の子ファン拡大

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「きかんしゃトーマス」シリーズが、SDGsと親和性が生まれるような形に変化していることも大きい。

中国の鉄道で働くヨンバオ。世界を旅する中、さまざまな国の機関車と出会う ©2019 Gullane(Thomas)Limited.

作品のコアな視聴者層は2歳から4歳あたりの未就学児が中心だが、機関車が主人公ということで今までは「男の子のためにコンテンツ」というイメージがあった。しかし、今は女の子の視聴者が増えてきているというのだ。それは、ジェンダーバランスが意識され、女の子の機関車も多数登場していったことで、これまでの構図に変化が生まれるようになったのだ。

「以前はイベントに来る女の子は、男の子の兄弟についてくる、という感じだったが、最近は女の子の姉妹だけで来てくださることも増えてきた。その傾向は数字にも表れていて、全世界的にも主要なマーケットでは4割くらいが女の子だという報告もある。そういう意味でも『きかんしゃトーマス』がSDGsを取り入れる土壌はあったかもしれない」(西岡プロデューサー)

女の子のファンが増えている

さらに、ここ5年ほど、劇場版『きかんしゃトーマス』シリーズの動員は増加傾向にあるという。それを受けて、4月5日から公開中の劇場版最新作映画『映画 きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー』は、劇場版シリーズ史上最大となる129館での公開が決定した。

女の子機関車のニア(左)はテレビシリーズでもレギュラーとして登場していくことに ©2019 Gullane(Thomas)Limited.

「実は『きかんしゃトーマス』を劇場公開しているのは日本が最初で、現在は日本を含む数か国ですが、欧米では去年の秋にDVDが発売されている。ただ、日本では毎年4月に映画を公開することで、おもちゃなどのグッズも展開しやすくなるなど、ビジネスチャンスも広がっている。子どもの映画館デビューの作品としても『きかんしゃトーマス』は最適だと思っている。さらに、お子さんと一緒に観た保護者からも『楽しめる』と評価いただいており、そういう意味で大人の方にも楽しんでいただけたらと思っている」(西岡プロデューサー)

企業は利益追求を行うだけでなく、社会貢献を行うべきである、という考えが広がるとともに、国際社会の共通目標であるSDGsへの注目は大きくなってきている。今後はその流れがさらに広がっていくことだろう。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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