ビットコイン急騰でも再編が避けられない事情 2020年を見据えて、まもなく動きが本格化?

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実際には、利用者に迷惑をかけない退場の仕方も考えねばならないことから、内部管理体制の構築が進まない交換業者は、1年半より短い1年ほどで金融庁から「退場」の選択を求められるだろう。

暗号通貨の幅広いサービスを展開するには、それなりのコストを支払わねばならないことから、今後、暗号通貨業界の再編は本格化を迎えることになる。そして、その再編は証券会社を交えた流れとなるだろう。それは、交換業者を金商法で細かく分けていく方針のなかにSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)が含まれているからだ(ICOとSTOの違いに関しては、3月13日寄稿の「金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか」をご覧いただきたい)。

証券会社を巻き込んだ業界再編がいよいよ本格化へ

今回の金商法改正のプロセスを細かく記述すると、上記のような証拠金取引を扱う交換業者は第1種金融商品取引業としての登録が必要となる一方、配当を出すなど投資性を持つ暗号通貨技術を使った資金調達を行い、トークンを新規で発行する業者は第2種金融商品取引業としての登録が必要となる。

ICOは、簡単なホワイトペーパー(IPOであれば目論見書に該当)で仮想通貨を用いた資金調達が可能だったことから、世界的に詐欺などのトラブルが多く発生した事実がある。国内でも、金融庁主催の「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、利用者保護のためのルール整備が急務であると議論されていただけに、ICOを有価証券として明確に金商法で管理していく体制(つまりSTOとしての管理)が進めば、暗号通貨を用いた資金調達の制度作りや、健全性は一段と引き上がりそうだ。

すでに金商業者としての登録を済ませている証券会社が、新たに暗号通貨に絡んだ事業を手掛けるには、別途、変更登録の手続きが必要となりそうだ。

しかし、有価証券に対する知見が豊富で人材もそろっている証券会社が、新たな資金調達の手段として暗号通貨業界でビジネスを展開する可能性は十分ある。仮想通貨交換業社を傘下に保有している証券会社がすでに存在しているほか、仮想通貨交換業者が証券会社設立に向けた動きもある。2020年の金商法、資金決済法改正を見据え、証券会社と仮想通貨交換業者との業務提携を含めた業界再編は本格化を迎えると考える。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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