日産と三菱自、「新型軽」で異例の役割分担 初めての試みは「3社連合再生」につながるか
ただ、2013年に発売された前モデルでは、2011年のNMKV設立から時間的猶予がなかったこともあり、三菱自が生産だけでなく開発も担っていた。今回の新型車からは日産が開発・設計、三菱自は水島製作所での生産、という役割分担に変化する。三菱自としては、自動車メーカーとしての生命線である新車開発の主導権を手放した形だが、それはプライドを捨ててでも日産の先進技術を取り込んでいかなければ、年間の世界販売台数125万台(2018年度見通し)の中規模メーカーが競争の激しい市場で生き残れないとの危機感が背景にある。
開発・設計と生産の役割分担は日産にとってもメリットが大きい。単眼カメラを使った運転支援システムが三菱車にも搭載されることで、数量増によるコスト低減効果が期待できる。特に軽自動車は国内車名別販売ランキングのトップ10のうち過半を占めるなどボリュームが大きい。三菱車が売れれば、運転支援システムを搭載する日産の他車種へのコスト低減効果が見込めるわけだ。
さらに、日産にはそもそも軽自動車生産の経験がないのに対し、三菱自は軽自動車生産のノウハウを60年以上にわたって蓄積している。主要部品の91%は水島製作所から20キロ圏内で調達しており、部品供給網(サプライチェーン)が確立している点でも三菱自が生産を担うのは自然な流れでもあった。
3社アライアンスがよい形で結実
三菱自の益子CEOは、「(日産の先進技術について)三菱の他車種でも展開していくことも考えている」と明らかにした。一方で、三菱自も技術を日産から受け取るばかりではない。プラグインハイブリッド車(PHV)の技術では三菱自が先行しており、将来的に日産とルノーが三菱自の技術を活用して世界展開することもありえそうだ。日産と三菱自は電気自動車(EV)の軽も共同開発中で、今回のように設計・開発と生産を役割分担する体制が今後も続く可能性が高い。
新型車の開発でさらに興味深いのが、軽自動車用に新開発したエンジンに、ルノー製エンジンの基本設計を採用している点だ。ルノー製エンジンをそのまま搭載しているわけではなく、基本設計を日産側でアレンジしているが、これによって開発期間が大幅に短縮されたという。今回の新型軽自動車の開発にあたっては、3社アライアンスがよい形で結実したと言えるかもしれない。
3社トップを兼任したゴーン氏の逮捕以降、アライアンスは主導権をめぐって対立が深刻化し、一時は存続さえ危ぶまれた。アライアンスに属する各社が経営資源を持ち寄り、それぞれに利益がある「WinーWin」の理念を掲げながら、その利益のバランスが特定の社に偏っていたことが不正問題の遠因にあるとの指摘も多い。今回の新型車はその原点に立ち返り、アライアンスの再生につながるモデルケースになりうる可能性をも秘めている。
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