強い奥さんを持つ、中国エリート男子の嘆き 中国の夫はつらいよ(上)

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――前に話を聞いたエリート女性たちは、社会にも家庭にも「安全感」がないと言っていました。男性から見ると、彼女たちの感じているリスクはそんなに多いと思いますか。

:すごく多いわけではないでしょうけれど、相対的に多いとはいえるでしょうね。まあ、僕も再婚だし。

――夫が帰宅すると、携帯電話の記録を奥さんが必ずチェックするなんて話も聞きます。

:一人っ子世代同士の若いカップルはそういうところが多いかもしれないですね。僕らは年齢的にもう少し上だから、そこまでではありません。

ただ、中国の変化は本当に目まぐるしいほどで、社会全体に落ちつきがない感じがします。特に海外から戻ってきてそう実感しました。男性も女性もみな、とても大きなプレッシャーを抱えていて、それが家庭環境に影響することもあるだろうと思います。

――特にどういうときにプレッシャーが大きいと感じます?

:たとえば、学生時代の仲間で、卒業後、転職しなかった人はひとりもいません。みな、必死で稼いできました。その結果、特にここ数年、突然、金持ちになった者とそうでない者との差が明確になってきた。学生時代はみな同じくらいの生活レベルだったのに、今では友人同士の距離がどんどん広がっていく気がします。

僕自身、仕事はまあまあよいほうだと思いますが、残業は非常に多く、業務上のプレッシャーはとても大きいです。残業してもその分、手当が増えるわけではありません。でも残業しないとさぼっているように思われる。そして残業すれば、妻は不満だと言う。オーストラリアにいたときは、家庭がきちんと重視されている感じがしましたが、中国は家庭よりも社会ですね。

――奥さんはどうしたら満足してくれると思いますか?

:接待を少なくして、もっと家庭サービスをすることでしょう。ですから最近はできるだけ早く家に帰るようにしています。

――いいだんなさんですねえ。でも、それでは仕事に影響が出るのでは?

:そうなんですが、同僚もみな同じような状況なので、理解はしてもらっていますよ。

※インタビューの続きは、1月23日(木)に掲載します。

田中 奈美 ルポライター

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たなか なみ

東京都生まれ。2003年より北京に留学。中国の社会生活やビジネスに関するルポを各紙誌に発表。著書に『北京陳情村』(第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作)『中国で儲ける―大陸で稼ぐ日本人起業家たちに学べ』(新潮社)がある

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