2度墜落した「ボーイング最新鋭機」に漂う不安 各国で運航停止続く「737MAXシリーズ」

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イギリス当局が運航中止を発表した直後、それまで模様眺めだった欧州航空安全機関(EASA)もついにMAX8、MAX9両機種の運航停止を勧告した。これにより、同型機はしばらく欧州への乗り入れが禁じられることになってしまった。

わずか5カ月の間に2度の墜落事故を起こした737MAX8。はたして、日本で利用する機会はあるのだろうか。

目下のところ、日本国内でMAXシリーズを保有する会社は1社もなく、国内線で同機種が回ってくることはありえない。なお、ANAが1月29日付でMAX8を「日本で初めて導入」と銘打ち、30機の発注を決定したと発表したが、受領は2021年度以降と予定されている。また、スカイマークもMAX8の導入に意欲をみせているが、これまでに正式な発注契約までには至っていない。

「遠いアフリカの事故」では片付けられない

日本に乗り入れてくる航空会社はどうか。最初にMAX8が定期便として就航したのは、シルクエアーのシンガポール―広島間だが、すでに同社は同型機の運航停止を決めているので、早晩、別の機材による運航に切り替えられる可能性が高い。

また、格安航空会社(LCC)のタイ・ライオン・エアがMAX9をバンコクから中部と福岡に乗り入れているが、そもそも墜落したMAX8と同型のエンジンを積んでいるうえ、インドネシアで事故を起こしたライオン・エアの姉妹会社ということもあり、なんらかの判断が近日中になされるかもしれない。

世界の航空需要を眺めると、LCC各社の台頭が顕著だ。6〜7時間を超える中・長距離便はこれまで、従来からあるレガシーキャリア(フルサービスキャリアとも)のシェアが大きかったものの、MAXシリーズや競合のエアバスA320neoの登場で「経済性の高い、単通路のナローボディ機でより遠くへ、より多くの旅客を運ぶ」という方針も打ち出せるようになってきた。

それにより、今まで盤石とは言えなかった「LCCの中・長距離便」のビジネスモデルが確立する可能性がより高まってくる。

はたして今回の墜落事故が、こういった新たな航空需要の拡大に冷水を浴びせる格好になってしまうのか。さらに、米中貿易戦争のさなかに、思わぬ形で、アメリカを代表する輸出製造業の旗頭・ボーイング社がよりによって中国航空各社を敵に回す引き金になってしまった。「遠いアフリカの事故」という一言で片付けるわけにはいかない「ボディブロー」となるのだろうか。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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