モノの所有が段々「時代遅れ」になっていく理由 「共有」「シェア」「つながり」が新たな価値だ

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このCtoCモデルをサービスにしたのが、「プラットフォーム」と呼ばれる、個人間のシェアを仲介する場を提供する企業です。2008年ごろからアメリカを中心に始まり、一気に広がりました。

例えば、宿泊場所を提供したいホストと宿泊したい人を結ぶ、民泊シェアプラットフォーム「Airbnb」や、自家用車を有効活用したいドライバーと、乗せてほしい人をつなぐライドシェアプラットフォーム「Uber」などが代表例です。その勢いはアメリカにとどまらず、ヨーロッパや韓国、中国、東南アジアなど世界中に広がっています。

日本ではまだまだ「シェアプラットフォーム=海外のサービス」という認識が強いですが、私が事務局長を務めている「シェアリングエコノミー協会」に属するシェアサービス企業は約280社、そのうちの9割以上が日本の企業です。日本発のシェアサービスも、これからますます普及・発展していくだろうと考えられます。

シェア時代には「信頼」がカギ

これまでのBtoCモデルでは、企業の評判や、国や業界が定めたサービス水準の指標などで、サービスの提供企業を信頼することができました。

一方、個人間、とくにインターネット上でのやり取りでは、「何をもって提供者を信頼できるのか?」ということが課題になります。

そのための新たな方法が「レビューシステム」。いわば個人間の「食べログ」評価のような機能です。

これまで相手と実際に会って相乗りをしてもらったり、宿泊場所を提供したりしたことのある人がつけた評価やコメント。これによって、「信用できるかどうか?」が可視化され、次にやり取りする人が判断材料とすることができるようになりました。

逆に言えば、どんなにお金があって社会的地位が高くても、信頼を獲得できなければ、シェアというコミュニティーや取引への参加は難しくなります。

シェアという概念では、この「信頼」をどう捉え、私たち一人ひとりがどう再定義できるかがカギになります。

シェアが生み出す新しい価値――それは、「これまで価値だと思われていなかったことが、価値になること」です。

例えば、住む人を失い何十年もそのまま放置されていた空き家や廃校などを、民泊やゲストハウスとして生まれ変わらせるなどの事例があります。

「企業が利益のために行う事業」という視点だと、需要が小さすぎてサービス価値として見なされなかったようなニッチな物事。それが、それを必要としている人と、それを活かせる知識や経験を持っている人とがプラットフォームを通じて出会うことで、新しい価値を生み出せるようになりました。

また、個人に視点を向けてみると、個人としてサービスを提供できるようになったことで、「自分でも気づかなかった得意なことや経験が、誰かのためになり、価値として交換できる」ようになります。

例えば、一般の主婦の方などが他の家庭の家事を行うシェアサービス「タスカジ」では、これまで家庭のためにやっていた整理整頓法を、依頼された家庭で実践したところ、大変喜ばれ、口コミが反響を呼び書籍を出版するなどの事例もあります。

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