全国の地方鉄道、「大同団結」すれば面白くなる いすみ鉄道前社長・鳥塚氏の大胆アイデア

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――鉄道会社側で改善すべき点は?

例えば、車両整備の問題が挙げられる。A社が車両を7両持っているとすると、走っているのは6両。もう1両は、ほかの車両が検査で使えなくなる期間のための予備だ。検査の際は、車両をバラバラにして整備し、また組み立てるので、2週間から1カ月かかる。その費用は1両2500万~3000万円かかる。

しかし、山手線の場合、車両が大量にあるので、前もって検査済みの部品を準備しておき、検査の際にはその部品に取り替えるので、2日もあれば終わる。

ローカル線はどこも同じようなディーゼルカーなどを使っているのだから、各社で連携すれば、それぞれの会社が1台ずつ余分な車両を所有する必要はない。各社共通の整備チームを1つ作って、そのチームがすべての会社の検査を担当すれば、高額な外注費を支払うより費用も抑えられる。それなら、全国に90ほどあるローカルの鉄道会社を1社に統合してしまえば、このようなスケールメリットを生かせる。

SLも共同で保有すればいい

――スケールの大きな話ですね。1社にまとめるメリットはほかにもありますか。

法律上、車両は会社ごとに登録しているので、別の鉄道の線路を走らせようとすると、あらためて登録し直すという手続きが必要だ。鉄道会社を1社にまとめれば、車両を融通し合うことができるようになる。

真岡鉄道は2つあるSLのうち1つの譲渡を検討しているとされる(写真:くまちゃん/PIXTA)

真岡鐵道が2台の蒸気機関車(SL)のうち1台の廃止を検討しているという報道があったが、確かに年間1台8000万円かかるという維持費は大きい。また、SLも長年通年運行していると、地元でもどうしてもマンネリになって、ありがたみも少なくなってくる。

しかしもし統合した1社で所有すれば、蒸気機関車とか国鉄型のキハとか、話題になる車両を季節やイベントなど、効果的なところを選んで年間5~6カ所移動させながら運行することができる。

また、現状のローカル鉄道会社にはマーケティングや広報、営業のための人員を割く余裕がないが、これも各社で一本化できる。

90の本社が1つになり、90人の社長が1人になる。整備本部は本社に置いて、各路線には整備課長以下が常駐すればいい。そうすれば、現在各社に数十名程度ずついる職員も、仕事が重複する人員を適正に配置し直せるなど、大きなメリットがある。いきなり全国が無理でも、例えば九州の第三セクター鉄道6社を統合するというのは、実現可能なのではないか。

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