「恋活アプリ」が世界中で増殖し続ける理由 最大手・マッチグループの幹部を直撃した
――「テクノロジーカンパニー」としての側面についても聞かせてください。アプリの使いやすさの改善や、マッチング精度を高めるAI(人工知能)活用に取り組んでいますが、こういった研究開発はサービスごとに別々で行っている? それとも統合した組織がある?
機能としては両方持っている。「ティンダー」(アメリカ・ロサンゼルス)、「ペアーズ」(日本・東京)、「ミーティック」(フランス・パリ)などの大きなブランドでは、各地に独自の開発拠点を構えているが、これらの世界中に散らばっている開発拠点を相互に連携させているのがうちの特長だ。統一のコミュニケーションツールを使って、いろいろな開発トピックスに関して情報交換できるようにしている。
トピックスは実にさまざま。たとえば、利用動向のモニタリング方法、マッチングやマネタイズの効率化策、アプリの使いやすさ改善などだ。サービスの見た目はみんな別々だし、それぞれの個性やアイデンティティーを尊重し合っているものの、実は裏側で共有している技術やノウハウはたくさんあるということだ。
「安全性の担保は大前提」
――特に技術、ノウハウをサービス間で共有しやすいのはどんな領域ですか?
いろいろあると思うが、代表的なのはセキュリティに関するものだ。全社的に、絶対に妥協したくないところでもある。人と人が親密になるためのサービスなので、プライベートな会話も交わされる。安全性が担保されていることは大前提だ。「サービスのアイデンティティーを尊重している」と言ったが、利用者の入力情報やコミュニケーション履歴の保護には、どの地域、どのサービスにも共通の高い基準を課している。
一方で、各サービスであえて別々の技術を使っている部分もある。特にマッチングのアルゴリズムに採用されるテクノロジーはいちばん差が出るところ。これはサービスの打ち出したい性格やポジショニング、それぞれのユーザーのニーズに影響される部分だからだ。
――ご自身はマッチングサービスの運営に携わって8年ほどですが、欧米でサービスの受け入れられ方が変わってきた実感が大きい?
非常に大きい。過去には自分自身でマッチングアプリを使った時期もあったが、当時はそれを使っていることや、それでパートナーと出会ったことをなかなか言いづらかったのを覚えている。でも今は、多くの人がためらわずにオープンにする世の中になった。この変化にはマッチグループとしても大きく貢献してきたという自負がある。
会社としては20年以上前からこの事業を行ってきたが、当初は「オンラインで出会うのも普通のことだよ」「しかもちゃんと成功するんだよ」ということをアピールするために惜しみなく広告投資をした。特に今ペアーズでも展開しているような、マッチングサービスで恋愛を成就させた、あるいは結婚し家族を設けたカップルの例をどんどん前に押し出す宣伝手法が当たり、欧米社会にサービスが受け入れられる「最初の波」となった。
「第二の波」は、ティンダーの登場(2012年)だ。スマートフォンの普及とともに、これが世界中で爆発的に発展した。家でPCやスマホの画面に向き合って相手を探すのではなく、外出先の街や移動中でも気軽に使えて、出会える。この気軽さがマッチングサービスにあったネガティブなイメージを薄め、興味を持つ層が一気に広がった。
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