若桜鉄道の社長はなぜ「船会社」に転職したか 秘策は「忍者高速船」を使ったキャンペーン

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

―― そういうことは、外からやってきた人でないとできないのですか。

地域にすっかり染まっていると、地域の特徴や魅力が日常になってしまい、見えないことはある。また、地方の人はとかく都会と同じことをやりたがる傾向があるが、便利さでは勝てるわけがない。外から見て「いいな」と思えるものを、商品として気づかせるのは中の人にはやりづらいだろう。

若桜鉄道時代はピンク色のSLが大きな話題に(写真:よっちゃん/PIXTA)

しかし、それ以上に「栓を抜く」という作業は外の人でないと難しい。閉ざされた人間関係の中では、一度失敗をすると、3代、4代先まで言われてしまうということが現にある。それでは、何か新しいことに挑戦したい人は、地域の外でやるしかない。その点、よそ者はそういうことが恐くないから、「やってみよう」と言える。

―― もう一つの活性策は?

人口減少への対処だ。若桜鉄道沿線では仕事を求めて人口が流出していたが、実はその7割は大都市ではなくすぐ近くの鳥取市内に移っていた。それなら、鳥取に通いやすく運行を改善すれば、引っ越さなくて済むではないか。

若桜鉄道は郡家(こうげ)駅でJR西日本の因美(いんび)線と接続しているが、その半分は直通運転で鳥取に出られる。しかし運行間隔が約2時間に1本しかなく、単線だからそれ以上の増便は無理だった。それなら交換施設(列車がすれ違える場所)を設ければいい。

利用が減っている路線で、そのような新たな設備投資はおかしいとも言われたが、人口の流出を防ぐためなので便利にしなければ先がない。これで1時間に1本の運行が可能になる。

鳥取へのアクセスは路線バスもある。ところが、鉄道とバスが別々に運行しているため、ほぼ同時刻に出発して、その後どちらも来ないということが起きていた。それなら交互に発車するようにすれば、30分に1本の割合で交通の足が確保できる。

このような鉄道とバスの協調運行をやろうとすると、それまで国土交通省が「独占禁止法に抵触する」として反対してきたが、「自治体が入ればOK」ということでクリアできた。

バスと鉄道で運賃が異なるが定期券の共通化も提言し、平均30分に1本は列車かバスで鳥取まで行けるようになると、生まれ育った土地を離れて鳥取市街に住む理由は1つ解消される。それが、地域のためにある鉄道の姿だと思う。

次ページ私の役割は「けものみち」をつくること
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事