「自動車」全滅! ニッポン大恐慌の現実シナリオ

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フリーフォール(垂直落下)とは、まさにこのことだ。

危機の萌芽は今年の春だった。原油価格高騰でガソリンは1ガロン=4ドル50セントまで上昇。世界最大の自動車市場である米国での影響はより大きく、ガソリンを大量に食うピックアップトラックや大型SUV(スポーツ多目的車)の需要が急落した。

大型車の比率が高い米国ビッグ3の惨状をよそに、当時の日系メーカーはまだ前年比増の月もあり涼しい顔だった。ところが9月15日のリーマンショックで潮目は一変。1ガロン=2ドルに戻ったのに、売り上げが戻らない。10月には35%減、11月に37%減と戦後最悪の販売減を記録。もはや米系も日系もなく、大型も小型もなく、自動車と名の付くすべてが真っ逆さまに坂を転げ落ちている。

米政府によるベイルアウト(救済)が焦点のゼネラル・モーターズ(GM)のみならず、北米在庫はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車までもがレッドゾーンに突入している。連日メーカーの減産計画が発表されるが、販売減のペースにまだ追いつかない。テレビCMがいくら自動車ローンのゼロ金利キャンペーンを連呼しようとも、未曾有の経済危機で消費者はディーラーをのぞいてみようという気にさえならない。

「今回は米国発の金融危機を伴っている点で、湾岸戦争や9・11よりも根深く、私たちの世代が経験する最も深刻な危機に思える。しかもそれは、ガンのように広がっている」。米テネシー州ナッシュビルにある北米日産会社のドミニク・トルマン副社長は眉根を寄せる。

西欧・東欧も厳しさを増し、新興市場もこの1カ月で急落した。夏まで2~4割成長を満喫していたブラジルとロシアが、それぞれ10月と11月に突如マイナスに転じた。アジアでもインドが10月、中国は11月に2ケタ減に沈没。頼みの新興市場も総崩れの様相を示している。

北米日産から南へ走ったスプリングヒルにはGMの工場がある。ここで造っていた小型車サターンは12月2日に提出された経営再建計画の中で売却候補に挙げられた。地元紙テネシアンによれば、サターン工場進出で街の人口は300%増えた。「1994年のホーム・カミングイベントには、全米から4万人のサターンオーナーが車で乗り着けたものだ」と同紙コラムは懐かしむ。

今回の危機は、こうした輝かしい街の歴史も消そうとしている。

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