「自動車」全滅! ニッポン大恐慌の現実シナリオ
経済優等生のつまずき 全国に走る減産ショック
日本でも似たような状況は起こりつつある。日系メーカーの海外現地生産比率は平均7割程度と意外に高くない。自動車産業は日本の総輸出額の25%を占める優等生であり、50年代の朝鮮特需以降、石油危機やバブル崩壊、超円高を経ながらも基本的に右肩上がりで成長してきた。ところが、日本車輸出は今年8月に37カ月ぶりに減少に転じ、とうとう日本の貿易黒字も消滅。輸出主導の景気に完全なピリオドが打たれた。
減産の波は全国を一気に駆け巡っている。「日に日に悪なっとる」。トヨタと関係の深いある機械会社の社長は気をもむ。「名古屋の会社はしっかりカネを貯めとるで、目先はそんなに心配しとらん。1~2年は赤字でも大丈夫。ただ、この状況が続くようだとえらいことになる」。
トヨタ2次下請けを顧客に抱える社会保険労務士の北見昌朗氏(北見式賃金研究所所長)は「2次下請けの経営者たちはパニクっている」と言う。バブル崩壊後にトヨタの国内生産が減って大変だと言われた時期でさえ、部品会社の生産は伸びていた。海外向けが好調だったからだ。
今回はトヨタの増産要請に応えるべく大投資し人もそろえ、準備万端となったところでの急ブレーキ。
「彼らの頭の中は人減らしで一色。まず派遣社員と偽装請負をバッサリですわ。パート、再雇用していた高齢者、それから日系南米人。愛知県下で、家族を含めればおそらく数万人を失業が直撃している。日系人が多いから、治安が悪化するかもしれん」(北見所長)。
本当の悪夢が始まるのはこれからだ。日系メーカー合計の減産幅は国内で80万台、海外で100万台超に及ぶ。一般的な工場の規模で換算すれば、国内外でそれぞれ四つ以上の工場を閉鎖する必要があるほどに、需給ギャップが拡大している。
世界一の恍惚は一瞬 トヨタ59年ぶり赤字も
最も心配なのは、11月の“1兆円減額ショック”も記憶に新しいトヨタだ。大型車の売上高構成比が高く、北米での販売喪失は他の日系メーカーより群を抜いて多い。