(第20回)現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(前編)

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 乱暴ではあるが、仮に

・言われたことをただこなすだけの人材を「作業人材」
・既存の「売れる仕組み」の中で効果的に力を発揮する人材を「足し算人材」
・既存の「売れる仕組み」を強化し、全員の力を高めることのできる人材を「かけ算人材」
・「足し算orかけ算人材」の能力に加え、新たな売れる仕組みを創り出すことのできる人材を「変革人材」

とする場合、数年後の近い将来、多くの人材を変革人材に育てあげることを前提に、採用活動を行う必要がある。これまでは、「売れる営業担当者」「できるシステムエンジニア」といった足し算人材、あるいは、しっかりした経理担当者、力のある広報担当者といった「かけ算人材」の素質があれば、ポテンシャル採用という名で、採用していた。もしかしたら、言われたことをこなすだけの作業人材であっても、採用していたかもしれない。
 しかし、これからはそれでは生き抜いていけない時代に突入する。人数を増やして売上を増やすという発想が頭の中にある限り、

 「経営環境が良いときに採用人数を増やし、悪くなると雇用を削減する。」

 という雇用の呪縛から逃れることができない。これからの採用活動は、少数でもいい、どんな環境下でも新たな「売れる仕組み」を見つけ、形にすることができる「変革人材」としてのポテンシャルを持つ人材だけを採用すべきなのだ。そうすれば、経営環境に一喜一憂することなく、もう少し長い目で人材採用と育成を考えることができるようになる。この機会に、そういう採用方針に切り替えていくことを提案したい。

 新卒で入社した人材が、2年目に新規事業を立ち上げ、3年目の現在は、2億円を超えるビジネスに育て上げているという事例がある。上場企業の中にも、新卒で入社し5年目に事業を立ち上げ、6年目の今年は、売上の3本柱の一角となるまで事業を育て上げた若手社員の事例もある。変革人材が持つ能力と情熱は、外部にコンサルタントを雇うよりも遙かに多くのメリットを自社にもたらしてくれる。経営環境が悪化している現在も、彼らは持ち前の若さと行動力で、企業の主力として新しいビジネスの芽を見つけ、育てていくことだろう。

 最後になるが、ウォーリック・モデルという名で知られる、HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)のケーススタディーでは、調査対象企業の多くが、チャンスのあるときでなく、困難な経営環境の下で、経営戦略・人事戦略が明確化されていったと報告されている。もちろん、経営環境の悪化は誰にとっても悩ましい問題だが、来るべき新しい時代に向けて必死に考え、変革を促す呼び水でもある。

 現在の環境をピンチではなくチャンスと捉え、自社の人事戦略を今一度、強化・明確化する活動に取り組まれるきっかけとされてはいかがだろうか。

 次回のコラムでは、変革人材のポテンシャルを見抜き、育てるための方法について考えていくことにする。

福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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