「自動車リース」に石油元売りが参入するわけ 自動車整備工場から保険代理店まで続々参入

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多くの業界関係者から「オートリースの認知度向上に大きな役割を果たした」として名前が挙がるのが、石油元売り大手を傘下に置くコスモエネルギーホールディングスだ。コスモ石油のサービスステーションに毎日50万台の自動車が訪れるという強みを生かし、また早くからテレビCMを大々的に展開。個人にもリースという選択肢があることを伝えてきた。

個人向けリースに力を入れてきたコスモ石油(撮影:大塚)

コスモの動きに呼応するように、新車・中古車販売のディーラーの中にも積極的にリースを扱うところが増えてきた。従来、車を販売していなかった整備工場やカー用品店チェーン、さらには保険代理店などからの参入もある。

JALAの久保田憲・事務局長は「リースは認可事業ではないので誰でも参入できる。だが、オペレーションはノウハウの塊だ」と主張する。たしかに毎月のリース料金には税金や車検代、保険料、さらにはメンテナンス料を組み込むことが多く、こういった業務にも通じる必要がある。事業を運営するうえでは、車両の在庫を抱えたり、また与信が焦げ付いたりといったリスクもある。

市場成長を陰で支えるオリックス

実はコスモ石油は代理店の役回りを務めており、背後には複数の提携会社の存在がある。中でもコスモ石油の成長を支えてきたのがリース業界首位のオリックスだ。レンタカーやカーシェアリングも展開し、車両管理台数ではダントツの首位。三十数年前から個人向けオートリース市場の開拓に挑んできており、2007年からはECサイトでも取り扱いを開始した。

車は買って乗るものという意識が強い個人にとって、リースは契約期間の満了時に車を返却しなければならない。この抵抗感を和らげるため、オリックスは契約満了時に顧客の選択で車を引き取ることのできる商品を開発し、個人向けリースの普及に努めてきた。オリックス自動車リース営業本部の髙城智執行役員は「対面、非対面取引とも契約は順調で、保有契約台数は今期までの6年で5倍に拡大する見通しだ」と語る。長年の取り組みが花開いてきた格好だ。

リースは基本的には法人相手のビジネスであり、個人向けを取り扱うリース会社は細々と手掛けていたにすぎなかった。1社で100台、1000台と契約ができる法人に対して、個人相手はいかにも効率が悪い。契約書ベースで物事が進む法人と違い、個人相手では重要事項の説明をきちんと行うなど、別種の手間やノウハウが求められる。グループで銀行や生保に展開して個人向け事業にも経験豊富なオリックスは例外といえる。

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