50ドル前半へ反発も、原油価格上昇は限定的 米中貿易摩擦、英EU離脱などリスクは山積み

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三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至・主任研究員は、「原油はリスク資産の代表として売られてきたが、(今年に入ってからの価格上昇は)弱気のポジションの巻き戻しで反発した形」と指摘する。

そのうえで、今後については「米中摩擦やブレグジット(英国のEU離脱)、イタリアの財政問題などのリスク要因が目白押しで、上値が重い展開が続く」と見る。とりわけ米中摩擦が中国の景気に与える影響が懸念されるとし、2018年12月に2016年2月以来の低水準を記録した中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が今年1月以降、さらに落ち込むリスクに注目している。

こうしたことから芥田氏は今後のWTIの見通しについて、「1バレル60ドルは近いようで遠い。再び40ドル近くまで下がることも想定される」と予想している。

当面は45~57ドルで推移か

JOGMECの野神氏も当面は「45~57ドルの推移」と読む。「2018年11月にドナルド・トランプ大統領はWTIが54ドルの段階で、もっと下がってほしいと発言しており、55ドルを超えると、また同様の発言をする可能性がある。サウジアラビアは減産しても、アメリカのそうした発信を意識せざるをえない」との見方をしている。

米中交渉やアメリカの金融政策をみても原油価格を引き上げる新たな材料は期待しづらく、3月以降は季節的要因から原油需要が減ることもあり、相場は下振れしやすい。ただ再び45ドルを割ってくれば、アメリカのシェールオイルも採算が厳しくなり、生産のペースが落ちてくる。このため、需給面から相場が下支えされることはありそうだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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