50ドル前半へ反発も、原油価格上昇は限定的 米中貿易摩擦、英EU離脱などリスクは山積み

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原油先物市場は50ドル台前半で推移している。写真は上海のガソリンスタンドで給油する従業員(写真:Aly Song/ロイター)

2018年10月初頭に1バレル76ドル台をつけて以降、12月下旬には42ドル台まで急落していたニューヨーク原油先物相場(WTI)。今年に入り、50ドル台前半で推移するなど、反発機運を強めている。原油価格が値戻ししている背景には何があるのだろうか。

10月以降、原油価格が急落したのは、世界経済の先行きの見通しが不透明になり、原油需要が落ち込む懸念が強まったことが背景にある。株価の下落に引っ張られる形で下げを早めた。

アメリカの需給は引き締まっているが…

だが、12月下旬以降は、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が株安に配慮して金融引き締めの見直しに柔軟な姿勢へと転換したことや、米中貿易摩擦をめぐる米中交渉がうまくいっているとの期待が高まったことを受け、やはり株価と軌道を合わせる形で反発に転じている。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国が2019年1月から日量120万バレルの減産に踏み切ると決定したことに加え、アメリカの12月以降の原油在庫に増加が見られず、需給面でも引き締まるとの観測も好感された。

ただ、先行きはそれほど明るいものではない。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之・上席エコノミストは「原油相場は依然として期待先行型で、足元はよく見えていない。心理的なものに値動きが振り回されている状況に変わりはない」と見る。

利上げやバランスシート縮小などFRBの金融政策の方向性もまだはっきりしない。米中交渉についてもすべての問題が解決されるという形ではなく、部分的な妥協となることで、上乗せ関税の撤廃が先送りとなる可能性がある。野神氏は「米中経済の先行きに確信が持てない状況では、原油の上値も重くならざるをえない」とみる。

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