この状況が何をもたらしているのかというと、アメリカの貿易収支の巨額な赤字です。アメリカが抱えている貿易赤字の実に半分以上は、中東からの原油の輸入によって計上されているのです。
シェール革命で、エネルギー・軍事コストが劇的に削減
ところが、アメリカ国内でシェールガスやシェールオイルの採掘が可能になり、その採掘量が右肩上がりに増えてくると、中東産の原油を輸入する必要がなくなっていきます。これは、長期的に見て貿易収支の赤字額が減少傾向をたどっていくことを意味しています。貿易収支の赤字が減ることによって、米ドルは、上昇していくことになるでしょう。
もう1つ、シェール革命がアメリカにもたらすメリットは、軍事費の削減です。アメリカが国内の旺盛なエネルギー需要を満たすため、中東から大量の原油を買っているのは、すでに説明したとおりです。
ここで大きな問題があるのは、中東から原油を買いつけたあと、それをいかに安全にアメリカ国内まで運んでいくかということです。タンカーによって海上輸送を行うに際して、反米アラブ諸国からの攻撃を受けないとも限りません。そのため、アメリカは「北アフリカ・中東・南アジア」地域で軍を展開しているのです。
しかし、仮に将来、中東産原油に依存する比率が著しく低くなったら、中東方面にアメリカ軍を展開する必要性が薄れていきます。結果、アメリカの国家予算に占める軍事費が減少し、財政収支の赤字も減らす効果が期待されます。
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