山梨知事選、二階=岸田連携に思わぬ「死角」

積年の「保守分裂選挙」の怨念は払拭できるか

そこで浮上したのが長崎氏の知事転身だ。大蔵省(現財務省)のエリート官僚出身の長崎氏は政界入り前後から知事選出馬にも意欲を示し、2015年知事選でも手を挙げたが、自民党山梨県連の反対でとん挫した経緯がある。今回は二階氏が長崎氏を推し、岸田氏も賛同して党本部主導で長崎氏擁立が決まった。山梨2区での身内の争いに終止符を打ちたい二階、岸田両氏の利害が一致したためで、政府与党が結束して「山梨決戦」に臨む構図となった。

告示日の10日に山梨県都留市で開かれた長崎氏出陣式には岸田氏が出席。脇に控える堀内詔子氏を呼んで壇上で長崎氏を挟んで手を握り合い、3人そろって勝利を誓った。岸田氏の後見人でもある岸田派の古賀誠・名誉会長も、12日の後藤氏決起集会で「本当に感無量。初めて彼の選挙を手伝うことができる」と自民陣営の結束力を誇示した。堀内氏と長崎氏が衆院議員と県知事で住み分けができれば、長年の火種が解消し、ポスト安倍を狙う岸田氏にも勢いがつく。

しかし、双方の思惑とは裏腹に、地元の相互不信は消えていない。岸田派内でも「二階派の落選議員の就活を、なんで手伝う必要があるのか」(若手)との不満は根強く、堀内氏の地元陣営からも「長年、血で血を洗う戦いを続けてきたのに、突然、仲良くしろといわれても、納得できない」(堀内氏後援会幹部)との恨み節が相次ぐ。

地元で相次ぐ「造反」の動き

一方、長崎氏の陣営でも「堀内陣営が本気で支援してくれるはずがない」との疑心暗鬼が根強く、長崎氏自身も周辺に「邪魔をしないでくれればいい」と突き放しているとされる。もともと、県知事選で保守分裂選挙が常態化してきたこともあり、今回も県下の自民党系市長が党本部に造反する形で後藤氏支援に回るなど、中央主導の総力戦も「地元では誰も信じていない」(長崎氏陣営)のが実態だ。

一方、自民党の挑戦を受けて立つ形となった立憲民主、国民民主両党は、自民党の足並みの乱れを利用して勝利を目指す戦略だ。旧民主党時代の実力者で「山梨のドン」とも呼ばれた輿石東・前参院副議長(2016年に政界引退)は10日の後藤知事の出陣式で、「12年に1度の政治決戦が山梨から始まる」と必勝を訴えた。ただ、党幹部や閣僚を大量動員する自民党とは対照的に、立憲民主、国民民主両党は「国会議員は前面に出ず、地道な県民選挙を徹底する」ことで保守票の取り込みを狙う。「下手に国政選挙のような戦いにすれば、逆に与党が結束する」(立憲民主選対)恐れがあるからだ。

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