「ドローン」が切り開く、新しい観光サービス 高齢者や障害者も楽しめるバーチャルツアー
その後も、鳥取砂丘や岐阜県郡上市などで実証試験を重ねていった。しかし、ここで価格設定の問題に直面することになる。ツアー参加者に記入してもらったアンケートによれば多くの人が、ドローンツアーに支払ってもいいという金額は高くても3000円と回答していた。
しかし、ドローンツアーを行うには、安全面への配慮から基本的に事前の現地ロケハンが必要になる。また、ツアー当日はパイロットのほか、現場全体を統制する運行管理者、空域を見張る空域管制のスタッフのほか、別の場所で映像を見るお客さんに対応するスタッフも配置しなければならない。
こうした準備や人件費がかかることから、1人3000円では採算をとるのは難しい。そこで、実際の売り出し方としては、ドローンツアーと、地上のバーチャルツアーやリアルツアーを組み合わせて、一般的な旅行ツアーに準じた料金で提供する方針になった。
ドローンの可能性は?
さて、ドローンツアー「空力車」のサービスを本格的に売り出す2019年は、岩井さんにとって勝負の年になるが、その道は必ずしも平坦ではない。というのも、バーチャルツアーをすでに展開している大手航空会社もあり、今後、バーチャルツアーとドローンを組み合わせた商品を売り出してくる可能性も否定できない。もし、大手が参入してくれば、迎え撃つのは難しい。そこで、岩井さんはドローンツアーの市場を開拓しつつ、よりユーザー目線に立ち、かつ、より独自性の高いサービスの方向性を出していかなければならないと考えた。そして行きついた先の1つが医療とドローンツアーの結びつけだという。
「三郎おじいちゃんがドローンツアーを体験したことで笑顔を見せてくれたのは、僕にとって忘れられない体験です。われわれのサービスを受けることが難病の患者さんや障害者の人たちのリハビリのモチベーションなどの面に、前向きなよい影響が与えられるのではないかと感じています。実は大手企業の研究室を借り、こうした実証試験を行う準備を進めています。取得したデータを医療の現場に還元できれば」(岩井さん)
また、岩井さんは、ドローンパイロットの養成と、パイロットと仕事のマッチングにも、今後は力を入れていきたいという。ただし、ここにも問題がある。
筆者は小型(有人)航空機の操縦をしていた経験から「自家用操縦士技能証明書」(国交省所管)と「航空特殊無線技士」(総務省所管)という公的ライセンスを保持している。ドローンは「無人航空機」として航空法の適用を受ける(200グラム以上の機体のみ)ため、ドローンの操縦にも公的なライセンスが必要なのかと思いきや、意外にも公的な免許制度はないという。
現状、安全に操縦するための技能・知識を習得することを目的とする民間団体が発行する認定証はあるが、これも操縦するために必須ではない。この部分が将来的にどのような影響を及ぼすかは不透明で、先が読めないのだ。
今後ドローンによる空撮をはじめ、ドローンを使ったさまざまなサービスや事業者が増えていくのは間違いないだろう。一方でパイロットの養成やドローンによる犯罪対策などの面で、多くの課題が残されている。
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