「ファーウェイ外し」で大きく揺れる欧州 懸念の中心にあるのは中国の「国家情報法」

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 1月14日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、同社の販売担当幹部がポーランド当局によりスパイ容疑で逮捕されたのを受け、欧州市場へのアクセスを巡る問題に直面している。写真は同社のロゴ。ワルシャワで11日撮影(2019年 ロイター/Kacper Pempel)

[14日 ロイター] - 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、同社の販売担当幹部がポーランド当局によりスパイ容疑で逮捕されたのを受け、欧州市場へのアクセスを巡る問題に直面している。

同社ポーランド法人の王偉晶氏とポーランドの元安全保障当局者の拘束により、ポーランド政府が国家安全保障上の観点から公的機関でのファーウェイ製品の使用を禁止する可能性が出ていると、ある高官は13日語った。

米国ではすでに公的機関での同社製品の使用は禁止されており、オーストラリアとニュージーランドでも次世代高速通信「5G」ネットワーク構築に際し中国企業を制限する措置を講じている。

欧州では、「ファーウェイ外し」で米国やその同盟諸国に足並みをそろえるべきかどうか、議論がヒートアップしている。懸念の中心にあるのは、中国の国家情報法だ。同法は中国の「機関や市民が、同法に従って、国家の情報活動を支援し、協力する」ことを義務付けている。

ファーウェイ側は自社のネットワークは安全だと主張している。同社は12日、「疑いのもたれている王氏の行動は自社とは関係ない」として同氏を解雇した。

欧州や同地域の主要な一部市場において、ファーウェイを巡る現状を以下にまとめた。

欧州連合やドイツなど各国はどう出るのか

域内の産業や安全にもたらすリスクのため、欧州連合(EU)はファーウェイや他の中国テクノロジー企業を懸念すべきだと、テクノロジーを担当するEU欧州委員会のアンシプ副委員長は12月に語った。

アンシプ氏の発言は、ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、対イラン制裁を回避するために国際金融システムが利用された疑惑を捜査している米国の要請により、カナダで逮捕されたのを受けてのもの。

●ドイツ

ドイツは国家安全保障上の観点から、中国通信機器企業禁止の是非を議論しているが、禁止する法的根拠はないとしている。同国の情報セキュリティー庁(BSI)は、ファーウェイによる欧州研究所の新設を歓迎した。同研究所は、規制当局がファーウェイ製機器を検査することを可能にするという。

欧州最大の通信大手ドイツ・テレコム<DTEGn.DE>は12月、取引する主要ネットワーク機器業者4社についてグループ全体で見直しを行っていると明らかにした。その中にはファーウェイも含まれている。これは、米事業のTモバイル<TMUS.O>が260億ドル(約2.8兆円)規模の米スプリント<S.N>との合併について米金融当局から承認を得るためには不可欠である。

ドイツの他の通信企業は今のところ、中国企業との関係を維持している。

●英国

英国政府の報告書を受け、ファーウェイは安全への懸念に取り組む対策の一環として20億ドルを投じると約束した。技術的な問題やサプライチェーンに関する問題により、通信ネットワークが新たなセキュリティー上のリスクにさらされていると同報告書は指摘している。

20億ドルを投じるというこの約束が発表される前、ファーウェイが自社製品のセキュリティー上の重大な欠陥を修正しなかったことに関する同社とのミーティングに出席した英当局の高官が、途中で退席するという出来事があったと、事情に詳しい関係筋は12月にロイターに明らかにした。

●フランス

フランス最大の通信会社オランジュ<ORAN.PA>は、自社の5Gネットワーク構築にあたり、ファーウェイには頼らないとしている。その理由として、フランス当局がセキュリティー上の懸念を持っていることを挙げた。

フランス市場においてオランジュはファーウェイの顧客ではないが、ファーウェイはオランジュの海外ネットワークには機器を供給しており、5Gネットワーク構築にも関与することが予想されるとしている。

●ノルウェー

ノルウェーはファーウェイを自国の5Gネットワーク構築から排除するかどうか検討していると、法務相は9日語った。

欧州・アジアの8カ国で契約数1億7300万人の国営通信会社テレノール<TEL.OL>は、2009年に初めてファーウェイと大口契約を結んだ。ファーウェイにとってこの契約は、世界進出する足がかりとなった。

テレノールと競合のテリア<TELIA.ST>は現在、ノルウェーでファーウェイの4G機器を使用しており、試験段階の5Gネットワークで同社製機器をテストしている。

●チェコ

チェコのサイバーセキュリティー当局は12月、セキュリティー上のリスクがあるとして、自国の通信会社にファーウェイや中興通訊(ZTE)<000063.SZ>などの中国通信機器サプライヤーが製造したソフトウエアやハードウエアを使用しないよう警告した。

一部の通信会社はチェコで5Gを試験しているが、通信会社「CETIN」を所有する投資会社PPFグループは、ファーウェイと5Gで協力する覚書を交わした。5G周波数帯の競売は2019年に予定されている。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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