東京電力の「未来」は分割・破綻方式で開ける 先送り方式は限界。新スキームに移行するべき
「年内にまとめ上げるのは難しい。発表は年明けだろう」。原子力損害賠償支援機構(以下、機構)の関係者はこう話す。難航しているのは、「総合特別事業計画」、通称“総特(そうとく)”の見直しだ。これは2011年8月成立の機構法に基づき、東京電力と機構が12年4月に策定した東電再建計画のこと。その見直し案の公表が当初計画の年内には間に合わず、来年1月にずれ込むという。
原因は、自民党の東日本大震災復興加速化本部が11月にまとめた提言を受けて、安倍晋三政権が除染費用に国費を投入しようとしているため。この内容を総特に反映させる作業が難航しているのだ。
提言がそのまま通れば、東電は福島事故の賠償費用を従来どおり全額負担するが、除染費用は、すでに計画済みの分(2兆円程度)だけとなり、中間貯蔵施設の建設費を含む残りを国が肩代わりすることになる。除染費用の総額は5兆円超ともみられており、東電にとっては大きな負担軽減だ。逆に国の負担、すなわち国民負担は膨張する。
そもそも東電が総特の見直しを迫られているのは、計画と現実が大きく乖離しているためだ。現在の計画は、13年4月から新潟県の柏崎刈羽原子力発電所が順次再稼働することを前提に、今13年度は900億円強の経常黒字を見込んでいた。
ところが、実際には再稼働のメドはまったく立たず、今年度中の再稼働は不可能な情勢。修繕費の先送りなどで3期連続の赤字を回避し、250億円程度の黒字を確保する見通しとはいえ、計画は大きく狂っている。
金融機関の事情
今のままでは、総特の実施を前提に機構経由で1兆円を出資した政府や、11年3月の震災直後に約2兆円の緊急融資を行い、さらに12年4月以降に約1兆円の追加与信を約束した金融機関の理解が得られない。ちょうど12月末は、1兆円の追加与信のうち、3000億円の新規分と2000億円の借り換えのタイミング。東電としては、計画どおりの融資を受けるためにも、金融機関が納得しうる新計画に練り直す必要がある。
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