東京電力は分割・破綻処理するべきだ 野村修也・中央大学法科大学院教授・弁護士に聞く

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東京電力の福島第一事故は汚染水の増大・漏洩などいまだ収束のメドが立たず、放射能汚染の除染作業も進捗が遅れている。こうした中で自民党は汚染水対策だけなく、中間貯蔵施設の建設を含む除染費用にも国費を投入する提言をまとめ、政府もその方向で検討している。今後、国民負担は兆円単位で膨大化する可能性は高い。
こうした政府・自民党の動きに対し、事故対応で「国が前面に出る」ことはやむを得ないとしても、除染費用への国費投入は賠償スキームが瓦解したことを意味しており、原点に返って、株主や金融機関を含めた関係者間の賠償負担のあり方を見直すべきとの議論も高まっている。
福島事故の国会事故調査委員会委員も務めた中央大学法科大学院の野村修也教授・弁護士は、国が除染費用に税金を投入するのならば、東電の破綻処理が前提であるべきであり、東電を分社化したうえでの破綻処理を行うべきと主張する(週刊東洋経済12月9日発売号 核心リポート01 「東京電力の未来は分割・破綻方式で開ける」の関連記事です)。

――除染費用へ国費が投入される方向となるなか、福島事故の賠償スキームを根本的に見直すべきとの議論が高まっている。

ここにきて最大の論点になっているのは、東電の資金だけでは解決できない問題点の全体像が見えてきたことだ。最初のきっかけは汚染水問題。廃炉・汚染水対策は東電がすべて資金を負担するのだから、作業についても国が前面に出る必要はないというのが無責任との受け止めが国民の間で広がった。

これがきっかけとなって、除染費用の負担のあり方が問題となった。国と東電の負担の線引きがはっきりしていないことから、環境省の費用請求に対して東電が払い渋りしているとの話が出てきた。しかも、この除染費用の総額は莫大なものになるとも言われている。こうしたことから、従来のスキームが破綻している実態が国民の目に明らかにされたといえる。

東電がもし莫大な除染費用を賄えないとしたら、それは国民の負担になるのだと国民は気づいた。税金の投入に関して国民はかねてよりセンシティブ(敏感)だ。過去の不良債権処理への公的資金投入でもそうだったが、税金は納得感のある使い方をしてほしいと国民は思っている。その際、東電の株主や取引銀行がこれまで明確な責任をとっていないことに疑問が出てくる。今のスキームは、東電を破綻させないことを前提としているが、これで果たして国民の納得感が得られるのかというのが、見直し論のスタートラインといえる。

選択肢は2種類

――原子力損害賠償法(原賠法、1961年施行)と原子力損害賠償支援機構法(機構法、2011年8月施行)に基づく今の賠償スキームでは、国が機構を通じて資金を注入して東電の破綻を防ぎつつ、賠償の全責任を負う東電が長期にわたって国に資金を返済していくという形になっている。

スキームをつくった当初、選択肢は2つしかなかった。

1つは、今回の大震災は巨大な災害だから、東電に責任はなく、被災者の補償などは国が災害対策として行う方法。この場合、費用はすべて税金で賄われる。東電も被災者の扱いで、当然、破綻しない。法律的には、原倍法3条のただし書きと17条の適用だ。東電も当初はこのスキームの適用を求めて、(民主党)政権側とかなりやり合っていた。

しかし、政府はこの選択肢はとらないと決めた。つまり、原賠法3条本体の適用で、東電に無限責任を負わせた。この場合、賠償責任が政府補償(1200億円)を越えるときに、東電は政府の“援助”を受けられるという原賠法16条がある。ただ、16条適用のスキームで行くならば、東電が責任を全部果たす、つまり破綻処理しても賠償費用がまだ足りないときに初めて国が不足分を援助することになる。なぜなら、東電は無限責任を負うわけだから、それは破綻を前提したものと考えられるためだ。

ところが、今のスキームはそれらの中間。表向きは16条適用だが、実質は17条のように東電を破綻させないで、国が小出しに負担し続けているというもの。それは中途半端で理解しがたい。

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