レクサスが抱える「世界観」の確立という難題 「ES」「UX」投入で新しい流れをつくれるか

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当時、ドイツのメルセデス御三家と言われた、ブラバス、ロリンザー、カールソン。筆者は各種雑誌の取材で、同3社を含めてドイツ国内各地のメルセデスチューニングメーカーを定常的に訪問してきた。1980年代には、BMWでACシュニッツアーやハルトゲなどが日本でも人気になったことはあったが、1990年代のメルセデスチューニングブームは世界のプレミアム市場の変革をもたらすほど強烈なインパクトがあった。

こうした流れの中で、ダイムラーがチューニングブランドの大御所、AMGを買収して内製化した。同時期に、BMWは「M」ブランドを再構築、アウディはブランドというより「R」をロゴとした商品戦略を展開、GMキャデラックは「V」シリーズを新設、そしてレクサスは「F」としてハイパフォーマンス系の展開を始めた。

 商品性重視から、独自の世界観による感性へ

このように、レクサス創設からの世界プレミアム市場の動きを俯瞰すると、もともとはダイムラー(メルセデス)主導で進んできた流れがある。

ところが、2010年代中盤以降は事情も変わってきている。ベントレーやロールス・ロイスがSUVへの市場導入を決めたり、アストンマーティンやマセラティなど老舗プレミアムスポーツカーメーカーが勢いを復活させるなどして、メルセデスAMGでも「安い」と思ってしまうほど、プレミアムブランドの価格帯が高騰してきた。

2018年11月、レクサス「ES」、山口県秋吉台で(筆者撮影)

さらに、打倒テスラを掲げて、中国を拠点とするNextEV(NIO) やバイトンなどプレミアムEVブランドが続々と登場している。

こうしたプレミアムブランド乱立の時代に、プレミアムブランドに求められるのは、ブランド独自の世界観である。

一方で、モノづくり第一主義の日系メーカーにとって、こうした「感性領域」は苦手分野だ。レクサスも例外ではない。近年、レクサスは顧客体験として「アメージング・エクスペリエンス」を提唱しているが、いまだにレクサス独自の世界観を富裕層に認知してもらう域にまでは達していない印象がある。

2018年12月、レクサス「UX」、千葉県房総半島の古民家カフェで(筆者撮影)

その意味では、新たに投入されたコンパクトSUV「UX」がどう受け入れられるかは、ポイントの1つだ。UXは商品コンセプトに「感性」を強調し、クルマに対して新しい価値観を求めている20~30代層を中心に、レクサスの変化を浸透させることを狙った車種といえる。

「GS」の役割を事実上引き継ぐとされる「ES」も、前輪駆動(FF)の高級車が日本でどう受け入れられるかが興味深い。ラインナップを広げてこれまでにない顧客層を獲得しつつ、独自の世界観を確立できるかが、レクサスの古くて新しい課題であろう。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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