カロリー絞っても「やせられない」という逆説 疲れやすくなる、集中力低下などの悪影響も
1990年から2010年にかけて行われたアメリカ国民健康栄養調査では、「摂取カロリー増加と体重の増加に相関関係はない」とのデータが示されました。肥満の人は1年ごとに0.37%増加したのですが、摂取カロリーはほぼ一定だったのです。
女性の平均カロリー摂取量は1761キロカロリーから1781キロカロリーへ若干の増加が見られましたが、男性の場合はむしろ、2616キロカロリーから2511キロカロリーへと減少していました。
イギリスでも同様の調査が行われ、摂取カロリーの増加も、食品から摂る脂質の増加も、肥満とは関係なし。つまり、「因果関係はない」との結論が導かれました。実際、肥満率は上昇しているのに対し、摂取カロリーはイギリスでも減っているのです。
低カロリーの危険性
今は倫理的に実施が難しい実験の1つに「飢餓実験」があり、興味深い報告が数多くされています。
1919年に行われたワシントンでの飢餓実験では、カロリー制限の有効性を否定する結果が出ています。研究の対象となった被験者は、1日1400~2100キロカロリーの食事を摂ります。これは、通常の摂取カロリーより30%削減された食事なのですが、実験参加者の総エネルギー消費量も30%減少していたことが判明しました。
これは、摂取カロリーを減らしたことで、体がバランスを取ろうとして消費カロリーも抑えたため。摂取カロリーが減った分だけ、体は消費カロリーも減らすよう勝手に調整しているのです。
また、「ミネソタ飢餓実験」と呼ばれる1944年と1945年に実施された調査では、「カロリーを制限しすぎることの恐ろしさ」が判明しました。第2次世界大戦後、何百万人も飢餓にさらされたのですが、当時は飢餓状態が人間の生理活動にどう影響するかは未知の情報でした。
そこで、カロリー制限をしている時期と、回復期における状態を理解する目的で実験が行われました。被験者は平均身長178センチ、平均体重69.3キロの健康で、平均的な体格の若い男性36人。はじめの3カ月、ごく標準的な食生活を送り、次の半年で体重24%減を達成するよう摂取カロリーが調整されました。