誰からも嫌われたくない人が生きづらい理由 名越康文が「対人関係のコツ」を徹底解説

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「上司」に対して、「親」に対するような甘えや畏怖(いふ)を覚えていないか。

「同僚」に対して「きょうだい」や「家族」へのような感情や距離感を見いだしていないか。

職場で「あの人が苦手だ」と感じたときには、まず自分の心の中にある「人から嫌われることへの恐怖心」や「家族のような距離感の中に入りこんでいないかに」を探ってみてください。それだけでも、それまでの自分の対人関係のあり方を見直し、関係性を改善するヒントが見つかることが少なくありません。

嫌われるのが嫌だから「YES」と言う

嫌いな相手や苦手な相手を避けるのではなく、逆に自分からすり寄っていったり、やたらと相手を持ち上げたりする人もいます。これは、心理学的には「反動形成」と呼ばれるもので、自分の中にある怒りや敵愾心(てきがいしん)を隠すために、自分の思いとは裏腹の言動を取るのだと考えられています。

反動形成が起きている人の中には、「嫌っている」という気持ちを相手に気取られるのが怖くて過剰にサービスする、という人もいれば、「誰かを嫌うという気持ちを持っていること自体を否定したい」という心理の人もいます。

自分はつねに「いい人」でありたい。「人を嫌う自分」を認めたくない。反動形成の奥にはこうした心理があると考えられますが、こうした反応のほとんどは、無意識ないしは本人の自覚があまりないということが特徴です。だから、相手のことを嫌っているという自分の本心には、きちんとは気づけないまま、相手の要求になんでも応えたり、太鼓持ちをしてしまったりすることがあるわけです。

このように捉えると、反動形成の背景には、先に述べた過剰適応があるということがわかります。また、文化的な背景としては、「身近な人を失望させてはいけない」とか「他人の期待には応えなければいけない」という、日本人特有の倫理観のようなものが作用していることも考えられます。

いずれにしても、こうした傾向を持つ人に必要なのは、「嫌われても大丈夫。自分はやっていける」という、ある種の「根拠のない安心感」だということが言えると思います。

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