誰からも嫌われたくない人が生きづらい理由 名越康文が「対人関係のコツ」を徹底解説
この教えにはもちろん科学的根拠があるわけではありませんが、これは、いま振り返ってみると改めて人間関係の真理をついているように思います。
同じ職場に10人、20人の人がいたら、どうも気が合わない人は必ず2人や3人はいる。そういう人とどう付き合っていくのかということは、働く人であれば誰にとっても避けがたい重要な課題なのだということを、まずは確認しておきたいと思います。
「すべての人に好かれなければいけない」という思い込み
特に日本人に顕著な傾向ですが、無意識のうちに「すべての人に好かれなくてはいけない」あるいは「誰からも嫌われてはいけない」という思い込みにとらわれている人というのは、少なくありません。
先に述べたように、どうしても気の合わない人というのは10人に2人ぐらいは必ずいる。そうすると、この「すべての人に好かれなくてはいけない」「誰からも嫌われてはいけない」という思い込みが無意識的に強い人は、普通に仕事をしているだけで、非常に大きなストレスを抱えることになります。
最近、小学生や中学生の不登校が社会問題化していますが、私が児童相談所などでかかわってきたケースをみても、学校にいけなくなる子どもの多くにみられるのが、この「すべての人に好かれなくてはいけない」「誰からも嫌われてはいけない」という先入観です。
改めて申し上げるまでもないことかもしれませんが、「誰からも嫌われない」ということは、不可能です。人それぞれ個性や好みが違う以上、あなたのことを好きな人もいれば、嫌いな人もいます。
もちろん、嫌われるよりは好かれたほうがいいでしょう。むやみに人から嫌われるような振る舞いをするのは、避けたほうがいい。誰だって人に嫌われるのは嫌なものだし、上司から嫌われれば出世の妨げになることもあるでしょう。あるいは、得意先の担当者に好かれることで、営業成績が上がることだってあるかもしれません。
ただ、どれほど努力をしても、何をやっても、どう取り入ろうとしても、あなたを受け入れてくれない人は必ずこの世に存在するのです。しかも一定数いると言ってよい。その現実をねじ曲げて「すべての人に好かれよう」「嫌われないようにしよう」という思いばかりが先走ると、リラックスした日常はとても送れなくなってしまいます。