「一杯3000円」の微妙なコーヒーが売れる理由 高くても売れる商品には共通点がある
一方、ダイソンのドライヤーの「売り」は大風量のみ。早く乾き、髪も傷めない。妻が使い始めて10日ほど経った時、気がつくと妻の髪はつややかになっていた。
これはダイソンが掃除機や扇風機などで培った強力モーター技術のおかげだ。ダイソンは自らの技術を生かし、「髪を大切にしたい」という女性のニーズを見極め、「大風量」というダイソンならではの価値を提供しているのである。
他社ドライヤーの場合、いろいろな機能を切り捨てられていない。裏を返せば、お客さんのニーズを絞り込めていない。「多機能なモノを安く大量に提供すれば、お客さんに喜んでもらえる」という過去の成功体験からなかなか抜け出せていないのである。
1本1250円のカレー用スプーン
もう1つ、紹介しよう。
近所のデパートで、新潟県燕市で作る食器の展示販売会をやっていた。ここで1本1250円の「カレー賢人」というカレー専用スプーンを売っていた。前から欲しいと思っていたので即購入。いまや安いスプーンは100均ショップでも買えるのに、なぜこんなに高いのか。実際にこれでカレーを食べてみるとわかる。実に使いやすいのである。
このスプーンは左右非対称だ。先端は斜めに緩いカーブを描き、カレーの具材をサクッと切るためにカーブの部分は2ミリほどナイフ状になっている。さらにこの部分は、皿に残ったご飯粒やカレーのルーもすくい取りやすい。いつもよりカレーをおいしく感じたのは、決して気のせいではないだろう。
このスプーンを生み出したのは、新潟県燕市にある金属洋食器メーカー・山崎金属工業の若手開発担当者だ。開発担当者は「カレーの聖地」といわれる神田神保町に通い詰め、店でカレーを食べる様子を実際に観察したり、実際にカレー好きに話を聞いた。お客さんの中には、マイスプーンを持ち込む人もいたという。
そこで気がついたのはスプーンをナイフ代わりにして具材を切る人が多いことだった。この発見を元に開発したのが、このカレー専用スプーンだったのである。
燕市の食器メーカーは高い加工技術を持っている。だからカレー好きの要望に応えることができたのだ。このカレースプーンは2017年7月に発売されるや、高価格にもかかわらず、3カ月で1万本売される大ヒット商品になったという。
このように「高く売る」答えは、現場にある。現場でお客さんのことをつぶさに観察し、徹底的に考え抜くことが、ターゲットのお客さんを絞り込み、高い価値を生み出すことにつながるのである。
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