「永遠の賃上げ」が最強の経済政策である理由 「毎年5%アップを強制する」政策が必要だ

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縮小

経済成長には、大きく2つの要因があります。1つは人口増加要因で、もう1つが生産性向上の要因です。今まで50年間における世界の経済成長の半分は、人口増加要因によりもたらされたものです。生産性向上要因の一部も、実は人口増加に依存していることがわかっていますので、人口増加要因の影響はより大きかったと判断することができます。

これから日本では人口が減ります。そのため、日本では人口増加要因が経済成長にマイナスに働きます。ですので、何もしなければ、日本経済はどんどん縮小していきます。

人口が減少するのであれば、生産性を高めなければ、経済成長を果たすことができません。しかも、生産性向上要因が人口減少のマイナス要因を上回ってはじめて、経済は成長するので、日本はどの先進国よりも生産性を向上させなくてはいけないのです。

生産性の水準と所得水準の間には、極めて強い相関関係があります。生産性が上がれば、給料も上がるのが道理です。逆に考えると、所得が増えなければ、生産性は継続的に上がらないはずです。つまり、給料が上がらなければ、日本経済は絶対に成長しないのです。

ですので、冒頭でも書いた通り、日本経済の成長は賃上げにかかっているのです。この件に関しては、議論の余地はありません。残る問題は、「どうやって賃上げするか」だけです。

具体的にどうやって賃上げを実行すべきか、また、実現するためには何をするべきかの説明は、追って別の記事で紹介することにして、ここでは1つ重要なポイントがあります。それは、「最低賃金を上げ続けなければならない」ということです。

継続的な最低賃金の引き上げが日本を救う

計算上、日本経済を継続的に1%成長させるには、日本人の最低賃金を毎年4~6%、継続的に上げる必要があります。これを実現することができたら、日本にはこれまでとは違うまったく新しい時代が訪れます。そうなってこそ、ようやく失われた25年からの脱却が果たせるのです。

上記の場合、2040年の最低賃金は2059円となります。政府の一部には最低賃金を1000円にするという人がいますが、それでは到底足りません。

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ここまで上げないといけない理由は、社会保障です。労働者1人・1時間あたりの社会保障費負担額は2020年に約824円ですが、今の制度が変わらないと仮定すると、これが2060年には2100円を超えてしまうのです。

国が主導し、賃上げ政策を実現させれば、税収が増え、年金と医療の問題も次第に解決されます。また、国の借金問題も解決に向かい、少子化問題も解決されます。同時に、女性活躍も進むことでしょう。

最後に、「最低賃金を上げるべきだ」と言うと、必ず「韓国では最低賃金を上げた結果、雇用と経済に悪影響を及ぼした」という批判の声が上がります。この比較がいかに不適切かも、後の連載で明らかにしていこうと思います。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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