マツダ「アテンザ」FR化説に納得しかない理由 駆動方式はなんだかんだクルマの性格を決める

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そもそも単にイメージの問題というのも少なからずある。モータリゼーションが本格化する頃まで主流だったFRの駆動方式では、どうしても車体前部に搭載したエンジンの動力を後輪に伝えるためのプロペラシャフトのように大きな部品を車体の下部を通さなければならない。

その点、FFレイアウトは構成部品が少なく限られたスペースのなかで室内空間や荷室を広く確保できるなどの合理性から、小柄な実用車を主体に40年ほど前から一気に普及した。そのため「FFは安グルマのため」のものというイメージが定着してしまった。

そんなわけだが、実はFF主体のメーカーが上級な車をつくるときに、FRならずとも有効な手段として挙げられるのが、4WDだ。実際、FFベースでも4WD化することで前に挙げた問題を大なり小なり解消することができる。

とりわけエンジンを縦置き搭載するアウディやスバルがいい例で、ひいてはポルシェとランボルギーニのSUVやベントレーの主力車種といったVWグループのプレミアムブランドのSUVが、実はFFベースの4WDであるプラットフォームを共用している。

それら一連の完成度の高い4WD車に触れると、ベースがFFかFRかというのは大きな問題ではないように思えてくる。

駆動方式が決定的な要因ではない

一方で、真偽のほどはまだ定かではないが、レクサスは中堅FRサルーンとして据えていた「GS」を、今後廃止すると言われている。そしてGSの代替需要の受け皿として、もともと北米向けで日本には導入されていなかった「ES」を歴代で初めて日本に導入する運びとなった。ご存じのとおりボディサイズは近いが、FFである。

現状、ESの受注において、やはりGSからの乗り替えるユーザーはそれなりに多いようだ。レクサスとしても、本来はGSを次世代へ切り替えたかったことに違いはなく、ユーザーもFRのほうがよかったのにと思っている人も少なくないだろう。確かに、このクラスの高級車でFFというのは世界的にも珍しいのだが、クルマの出来さえよければ駆動方式が決定的な要因ではないこともうかがえる。

ただ、レクサスの場合はGSの上位車種として「LS」という絶対的な存在が控えており、GSの弟分としては「IS」というFRベースの車種が存在する。これまで順調にきたESを残し、不振のGSを廃止するとすれば、納得はいく。

あるいは、かつてFRしかつくらないと公言していたBMWは、すでに小柄なクラスで傘下のMINIと共有化したFFベースのプラットフォームを用いており、クラス唯一のFRである点が売りだった1シリーズを次期モデルではFF化することが明らかになっている。

理由は居住性と荷室を広く確保するためだ。FRだった歴代の1シリーズは、走りのよさを高く評価された半面、広さでは不満の声が大きく聞かれたからだ。上級車種ならいざしらず、BMWとしてのエントリーモデルである1シリーズのユーザーがより広さを重視する傾向が強いことを受けてのことといえる。

駆動方式はクルマの性格を決める重要な要素であることは言うまでもない。クルマというのはテクノロジーの塊であり、技術の進化によりますますできることの範囲が広がっているが、駆動方式による本来的な性質までを変えることはできない。ようするに適材適所である。

だからこそ名声を博したスポーツカーに象徴されるように、これまで数々のFR車を手がけてきて、FRのよさを熟知しているマツダがアテンザのFR化を準備しているとささやかれていることに違和感はない。その挑戦がどのような形で世に出てくるのか、大いに期待して待つことにしたい。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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