性暴力の大罪を犯す腐敗国家が滅びない真因 国連の弱腰姿勢にノーベル賞医師が怒り心頭
ムクウェゲ医師の演説には、政治的なメッセージが2つあったと考えられる。第1に、国連とコンゴ隣国のルワンダ政府が触れてほしくない過去に言及した。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2010年10月、コンゴにおける重大な人権侵害問題の実態を調査したリポートを公表した。550ページに及んだ報告書は、目撃者1280人へのインタビューを基に、1993〜2003年にコンゴ全土で起きた犯罪が記録されている。
この報告書に関し、ムクウェゲ医師はこう述べた。
しかし、実行犯の名前はありません。国連人権高等弁務官事務所によるこの報告書には、617件以上の戦争犯罪や人道に対する罪、さらには集団虐殺さえも含まれているようです。この報告書を検討せずして、世界は何を待っているのでしょうか?
ここで言う「ニューヨークにあるオフィス」とは国連本部を指す。コンゴにおける不処罰と暴力の連鎖を終えるため、報告書の内容や提言は重要であった。が、報告書の内容は公表されて8年経っても国連で一切取り上げられず、黙認され続けている。
しかもムクウェゲ医師は、報告書が黙認されていることに2回も言及した。そのうえで、報告書を受け止めて行動を起こさない国連を暗に批判したのだった。
ルワンダ政府への批判をにじませる
第2に、戦争犯罪に関与し続けている政府とその同盟国(特にアメリカとイギリス)を批判した点である。演説では次のように指摘している。
ムクウェゲ医師は国名こそ言及しなかったが、コンゴ、ルワンダとウガンダ政府の責任に触れたのである。特にルワンダ政府を批判したかったと思われる。
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