「米津玄師」が年間音楽チャートを制した理由 スマホ起点のヒット曲、「ソロ」「孤独」に注目

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もう1つ、ビルボードが指摘するのは上位の楽曲の共通点だ。それは孤独を前提としていることだという。

「涙にくれ 淋しさの中にいるなら」(米津玄師『Lemon』)

「僕は一人で 夜の街をただひたすら歩くんだ」(乃木坂46『シンクロニシティ』)

「吐き出した 孤独という名の雲」(菅田将暉『さよならエレジー』)

「みんなに合わせるだけじゃ 生きてる意味も価値もないだろう」(乃木坂46『ジコチューで行こう!』)

ビルボード事業部の高嶋直子氏によれば、「日本人は歌詞を見ながら音楽を聴くユーザーが多く、歌詞は非常に重要。社会情勢が歌詞に表現されやすい」面があるという。ここでもスマホの影響がありそうだ。

前出の礒崎氏はこう分析する。「スマホはSNSなどつながるイメージがあるが、反面、孤独であることも認識せざるをえない。音楽を1人で、スマホで聴くときに、共感されるのが孤独なのではないか。ただ、DA PUMPやTWICEなどの楽曲は非常に明るく、両極端に分かれている」。

スマホ起点のヒットが生まれるように

昨今の音楽業界では、ユーザーがYouTubeなどの無料メディアで満足してしまう点がよく指摘されてきた。だが、そこからダウンロードやストリーミングにつながる楽曲は着実に増えており、2018年は、こうしたスマホを起点としたヒット曲が目立つ年だったといえる。今後はCDはもちろん、フェスやYouTubeなど、多方面から継続したヒットを生み出すことが業界の課題になりそうだ。

アルバムチャートでは今年引退した安室奈美恵の『Finally』がトップ。米津玄師も2位に食い込んだ。宇多田ヒカル、サザンオールスターズやMr.Children 、B'zなどのベテラン勢が健闘している。

ビルボードは12月から、従来の指標にカラオケ歌唱回数(通信カラオケ「DAM」を運営する第一興商と、「JOYSOUND」を運営するエクシングのデータ)も加算してランキングを作成している。2017年のカラオケボックスの市場規模は3901億円(全国カラオケ事業者協会調べ)と、音楽ソフト・音楽配信市場の2893億円(日本レコード協会調べ)よりも大きい。カラオケの加算によって、上位陣の顔ぶれが変わる可能性もある。

米津玄師をはじめ、ソロアーティストの躍進は続くのか。音楽でも韓流ブームは続くか。そして、上位曲の共通点だった「孤独」はどこへ向かうのか。音楽とのかかわり方が多様化する中で、2019年も混戦模様となりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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