西武後藤社長が明かす「埼玉をどうしたいか」 本社東京移転後の川越、所沢、球団の将来は?
――連結営業収益を足下の約5300億円から、将来的に1兆円にするという目標を掲げていますが、現在の新規事業計画としては、会員制ホテル事業「プリンス バケーション クラブ」と宿泊特化型ホテル「プリンス スマート イン」くらいしか目立つものがありません。達成可能なのでしょうか。
鉄道事業などの安定的なキャッシュフローがあると、つい油断してしまいますが、間近に迫る少子高齢化の問題などに備え、既存事業の強化だけでなく、新規事業をしっかりやっていくことが必要です。今展開している中では、スマートインを向こう10年で100カ所、バケーションクラブを20カ所くらいにしていきたい。
しかし、これだけやってもチャレンジターゲット達成にはまだ足りません。なぜ、このような高い目標を掲げるのかと言えば、BHAG(ビーハグ、Big Hairy Audacious Goal)という考え方がベースにあるからです。これは『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ著)に出てくる概念で、大きく、大胆で、達成困難な目標と訳されます。
1960年代初頭、ソ連に宇宙開発競争において大きく水を開けられたアメリカで、ケネディ大統領が「向こう10年の間に、人間を月に着地させ、安全に地球に生還させる」と宣言しました。誰もが達成困難と思う中で、1969年にアポロ計画として、人類初の月面着陸に成功しました。つまり、達成困難と思える大きな目標が組織に活力を与え、イノベーションを引き起こすというのがBHAGの基本的な考え方です。
われわれはBHAGをキーワードに、新たな視点でスピード感を持ってイノベーションを生み出そうということで、あえて業容を倍以上にするという高い目標を設定しているのです。
社長への報告義務がない部署
――イノベーションを起こし、新規事業分野を創出するために、新たな部署を立ち上げたそうですね。
昨年4月に西武HD内に「西武ラボ」という部署を立ち上げました。10人ほどが所属していますが、ルーティンワークは一切行わず、検討段階においては社長に対する報告義務もありません。現在の中期経営計画における総額450億円の戦略投資枠の予算を設定しているので、必要に応じてこの中から予算化していきます。今現在、いろいろなことを研究しており、これからどのような展開になるか予想がつきませんが、大きく期待しています。
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