漫画家に復帰して1年、31歳ですでにバイトをせずに生活していけるようになった。
さまざまなジャンルの漫画を描くうち、エッセイ漫画の仕事がきた。自身の性の営みを見せつける作品だった。
「初めてエッセイ漫画を描いて、こんなにも自分をさらけ出さないといけないのか?って戸惑いました。自分ではかなり描いたつもりでも、編集者からは
『もっと本気を出して描いてください!!』
と言われました」
エッセイ漫画の連載は2年半に渡り続いた。ずっと自らをさらけ出してお金にしてきたが、本当のところ何が面白いのかよくわかっていなかった。
「自分が本当に描きたかったのは、自分の性行為をさらけ出す漫画じゃないんだって気づきました。
どうせさらけ出すなら自分の過去、家庭内暴力の日々を描きたいと思いました」
3年前、『今日、パパに殺されます。』の原型になる企画書を作って知り合いの編集者に渡した。なかなか企画は通らなかったが、今年になって小学館で通った。
「漫画を描くにあたって、母親に根掘り葉掘り話を聞きました。私が知らなかった暴力の話も聞きました。母は私が20歳の時に離婚してあの男とは別居しています。それでも連載中はとにかく気が気じゃなかったみたいです」
そしていざ作品制作に入ったが、想像以上に難航した。
漫画を描いていて、初めてつらくなった
「家庭内暴力を描くと、一気に精神的余裕がなくなりました。すごい一生懸命取り組んでいるんですけど、全然まとまらないんです。つらかったです。漫画を描いていて、初めてつらくなりました」
自身が受けた熾烈な暴力を、思い出し、漫画にしていく作業がいかに胸裂くものかは想像に難くない。
エッセイ漫画は見せ方を間違えると、独り善がりな作品になってしまう。そうならないよう、気をつけて描いた。
「それでもまだちょっと自己満足な作品になってしまったかな?とも思います。もっと違う描き方ができたかもしれないと反省することもあります。
でもとにかく全4話120ページを描ききりました。描く前と、描き終わった後では、気持ちがまったく変わりました。
とても楽になりました」
と浅田さんは晴れ晴れとした笑顔で言った。
現在でも家庭内暴力を受けている子どもたちはたくさんいる。物心ついた時から暴力を受けている子どもは、自分が『家庭内暴力を受けている』という現実に気がつかないという。浅田さん自身もそうだった。
『今日、パパに殺されます。』を読んで、現状に気づいたり、事態が好転したりする家庭があればいいなと思った。
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