JR九州を農場経営に駆り立てた「問題意識」 鉄道とは縁遠い農業、意外と共通点がある?

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素人がいくら試行錯誤をしても、それはプロから見ればただの迷走にすぎない。玉名農場での4年間の取り組みはほとんど意味のないものだったという。結局、指導を受けて生産システムの変更などを行い、ようやく生産量が安定してきたところだという。

玉名農場の安藤恵祐農場長。運転士経験も豊富な生粋の鉄道マンから農業の世界に飛び込んだ(筆者撮影)

その玉名農場を現在取り仕切っているのが、安藤恵祐農場長。東京農業大学出身だが、農業土木が専門で土いじりの経験はほとんどなかった。さらにJR九州に入社してからは運転士をしていたという生粋の鉄道マンだ。農業部門への異動は自ら希望したものだという。

「運転士から運行管理までやらせてもらって、自分で言うのもおかしいですけど鉄道のことはある程度理解できた。そのなかで、新たなチャレンジができるなら、と。運転士時代はブレーキが利かなくなる夢をよく見たものですが、今ではトマトのハウスの中に病気が広まる夢を見るようになりましたね」(安藤農場長)

元運転士がトマト生産の達人に

今やトマト生産の達人になった安藤農場長。普段の業務は従業員やパートの労務管理から日々のトマトの生育管理まで幅広い。毎日トマトの様子を見て、少しでも病気などの予兆があれば農薬散布などの対策の判断をする。少しでもその判断に間違いがあれば、手間ひまかけて育ててきたトマトをハウスまるごとダメにしてしまうリスクもある。

「トマトの顔は、天候やその日の玉の具合で毎日変わる。先生には毎日日の出直後の植物の先端、成長点を見ろ、と言われます。判断を誤ると肥料をいくら与えてもまったくムダになる。作物が疲れ始めている予兆とか、そういうのも毎日見ないといけません」(安藤農場長)

そのため、連日日の出くらいには出勤してトマトの様子を確認、夕方帰る前にまた確認という日々だ。農場で働くスタッフの中には、7~8年のキャリアを持つベテランもいる。彼らもトマトのわずかな変化を見逃さずに農場長へと報告をあげてくれるという。こうしたスタッフの協力も得て、3年目の農場長は「美味しいトマト」づくりを日々追求しているのだ。

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