JR九州を農場経営に駆り立てた「問題意識」 鉄道とは縁遠い農業、意外と共通点がある?
ただ、当初は地域の農家から反発されることもあったという。
「最初は地域の農家の方々から我々の参入に対して反対の声が多々ありました。特に家族経営の農家さんにすれば、大企業が入ってきて広い農地を借りて立派なハウスを建てていったい何をするんだということでしょう」(田中社長)
もちろん、JR九州の運営する農場でも農産物は他の農家同様にJAに納めるし、JRの参入による生産量の確保はブランドの維持にもつながるため、地域にとって決してマイナスではない。しかし、農業への民間企業の参入が緒についたばかりの頃で、地域の農家の不安もわからないではない。
「ですから、信用していただくためには毎日土にまみれてコツコツやっていく。誠実に農家であろうとしているところを見ていただくしかないんです」(田中社長)
農業の知識がない素人集団
そうはいうものの、JR九州には鉄道のノウハウはあっても農業のノウハウはない。ピーマンを栽培している宮崎・新富農場の初代農場長は元駅長であったように、農業事業に従事する職員にしても農業の知識はまったくないズブの素人ばかりだ。
そうした人たちが急にコツコツ農業を、と言ってもそれは簡単な道のりではない。最初はピーマンが熟しすぎてしまい、ほとんど収量を得られなかったこともあるという。
そもそも農業は1年で1サイクル。5年続けてもわずか5サイクルの経験しか得られない。いくら大企業でも長年続けている農家と比べれば農業の世界では“ペーペー”にすぎない。そこで、JR九州ファームでは経験の豊富な農業のプロに指導を仰ぎながらノウハウを築いていったのだ。
「どの農場も苦労しています。今は長崎・松浦農場でアスパラガスの栽培が3期目に入りましたが、まだ一人前の農家になれていないので想定している収量・売り上げになかなか届きません」(田中社長)
ミニトマトを栽培している熊本・玉名農場についても「養液栽培をしているのですが最初はうまくいかず大変でした」と振り返る。「4年経ったころに名古屋にいる農家の方に先生をお願いしました。そのときに言われたのは『よくこれで4年もやってきましたね』」。
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