相鉄、平成30年間をかけた高架化「最後の夜」 一晩で踏切なくす「人海戦術」の切り替え工事
休日の天王町駅発終電は、上りが0時30分、下りが0時31分。切り替え工事当日は4時50分過ぎに試運転列車が走ることになっており、作業できる時間はどんなに長く見積もっても4時間程度だ。
レールの切断作業は終電発車からわずか十数分後にスタート。つい先ほどまで電車の通過を支えていたレールは1時前にはすっぱりと切れてしまった。
約300人の作業員が所狭しと行き交う駅構内は喧騒に包まれているが、駅の外に出ると騒音はほとんど気にならない。「住宅街なので、防音シートを立てるなど騒音対策には気を配っています」と柾谷さんはいう。それに加え、大がかりに見える工事としては重機類が少ないことも理由といえそうだ。作業のほとんどは人の手で行われ、まさに「人海戦術」だ。
人力で重い線路を移動
重い線路を移動させるのも人の力だ。大勢の作業員がバールを手に線路に取り付き、掛け声とともに少しずつ横へ横へとずらしていく。「大振り」と呼ばれる作業だ。
目標の位置に移動が済むと、今度はレールを接続するために長さを調整する「当て切り」が始まった。円形の刃が高速回転する「レール切断機」を持った作業員が、飛び散る火花に照らされながら真剣な表情でレールをカットしていく。
一方、その傍らではホームの工事が進む。移設した線路に沿うよう、ホームの幅を広げたり、一部は仮設ホームを新たに設置したりする必要があるためだ。
長さ200m超のホームのうち、従来と大きく位置が変わるために仮設ホームを新設するのは60m、幅を広げるのは約70m。限られた時間で作業をスムーズに進めるため、新たに設置する仮設ホームは高架線の上で土台を構築済みだ。既存ホームに張り出しを設けて拡幅する部分も、脚となる鉄骨がすでにホーム下に用意されている。これらは工事の1カ月ほど前から準備し、実際に組み立てるシミュレーションもしたという。
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