生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念

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こうした大規模無低の運営事業者などによる悪質な貧困ビジネスの実態を厚生労働省も問題視。厚労省が2015年に定めた現行のガイドラインでは、個室を原則とし、居室面積は7.43平方メートル=4畳半相当以上とされている。狭い床面積の場合は、住宅扶助(家賃)を減額する仕組みも導入された。

だが、こうした最低限の規制すら骨抜きにしかねない議論が浮上している。厚労省は11月、貧困ビジネスへの規制強化などに関する検討会の初会合を開催した。無低の最低基準や保護受給者の日常生活支援のあり方などについての検討を踏まえ、厚生労働省令や条例を策定するスケジュールを示した。

「簡易個室」を最低基準として公認?

検討会の開催は規制強化の流れの中に位置づけられるが、業界関係者の間では「厚労省は『簡易個室』を最低基準として公認するのではないか」との懸念が広がっている。

厚労省の資料の中にある、簡易個室の存在を前提としているかのような記述。特に強調されることなく、さらりと書かれている(撮影:編集部)

それは厚労省が初会合で示した資料に、「多人数居室、一つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在する」と、その存在を前提としているかのような記載がされているためだ。

現行ガイドラインでは「個室が原則」とされているが、仮にこの「簡易個室」が無低の最低基準として認められれば、これまで相部屋を中心に大規模展開してきた無低運営事業者でも、ベニヤ板で簡単に1部屋を間仕切りさえすれば、そのまま生き残れることになる。

この点については、12月17日の第2回検討会で議論される見通しだ。議論の行方によっては、悪質な貧困ビジネスの「儲けのカラクリ」を排除するどころか、その存在を肯定することになりかねない。そうした正念場を早くも迎えている。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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