1年で4倍! 急増する“和僑”って何だ? タイ・バンコクに日本人1000人が集結

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「3年は腰を据えて事業をやる覚悟と、つねにリスクヘッジを考えること。これから進出する方にお伝えしたいのはこの2つです。バンコクで会計•財務•会社設立法務などを行い、さまざまな企業をお手伝いしてきましたが、現地採用の人にすべてを任せて失敗するケースも見てきました。本人がこちらに来るとうまくいくことが多いように感じます」

可能性が大きい一方で、ここは異国。当然、想定外のリスクも起こる。ここに集まって来た起業家の多くが持つ、大きな失敗談。「今だからこそ笑って話せるけれど……」、そんな話は星の数ほどある。もちろん、笑って話す前に日本に戻ることになった起業家もたくさんいるのだ。

さらに、次の5年、10年を戦っていくうえで必要なのは、大成功者のロールモデルだろう。現在、“和僑”と呼ばれている人たちは、ひとつの国、ひとつの事業で成功を収めている起業家が多い。日本と上海で複数の会社を経営する佐藤良雄さんは、若手起業家への期待も込めて、こう語る。

「厳しい言い方をすれば、“和僑”として大成功した人は、まだいないのではないか。日本人の多くが名前を知っているような、ユニクロの柳井さんや楽天の三木谷さんレベルの起業家が出てこないと、大成功とは言えない。

現在の和僑会は、日本で言うと中小企業の社長が集まるネットワークになっている。ここから抜け出すことで、“和僑”は本当の意味で“華僑”に対抗できるようになるはずだ」

外務省によると、アジア地域で暮らす日本人は増加の一途をたどり、今では34万人を超えている。日本国内の人口は減少していく一方、海外で働く日本人が増え続けることは間違いない。これからの10年が勝負だ。そんな声があちこちから聞こえて来た。“華僑”に対抗できるような“和僑”ネットワークは、どこまで強固な広がりを見せられるか。

藤村 美里 TVディレクター、ライター

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ふじむら みさと / Misato Fujimura

都立国分寺高校、早稲田大学卒業後、テレビ局入社。報道情報番組やドキュメンタリー番組でディレクターを務める。2008年に女児出産後、視点が180度変わり、児童虐待・保育問題・周産期医療・不妊医療などを母親の視点で取材。2013年に退社し、海外と東京を往復しながらフリーで仕事を続けている。Twitter @MisatoFujimura 

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