「中国封じ込め」に転換か、西側新戦略の内実 ファーウェイCFO逮捕が示すもの

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10月4日にペンス副大統領がハドソン研究所で行った「中国批判演説」が持つ大きな意味とは?(写真:Edgar Su / REUTERS)

その後30年、世界の構図は再び大きく変わろうとしている。2001年にWTOに加盟した中国が世界2位の経済規模に成長し、技術、外交、軍事各面でグローバルな覇権をうかがう地位に躍進してきた。

最近、アメリカは中国の政治経済の運営全般に対して、これまでにない強烈な警告を発した。ペンス副大統領の10月4日にハドソン研究所で行った演説だ。政治色は割り引くとしても、この演説は注目に値するものだ。筆者は、かつてのX論文のように西側の大戦略転換の契機になる可能性があると考える。

「ペンス演説」は何よりも事例の具体性が注目される。バイオやロボットなどの産業で中国が首位を目指すビジョン「中国製造2025」を、アメリカの知的財産を官民総動員で奪取する試みだと非難した。デジタル技術で市民生活を監視する社会信用スコア制度や、南シナ海をはじめとする軍事外交的な攻勢、アメリカ国内の大学運営への浸透介入、対中批判勢力へのサイバー攻撃など、アメリカが批判する中国の行動は広範囲にわたる。

こうした特徴からも、演説は個人の見解というよりも、ワシントンの外交、安全保障、通商など各分野の政策の専門家の総意だという見方が強い。『Foreign Affairs』など専門誌でも、従来の認識の転換を迫る論文が最近増えている。たとえばKurt Campbell and Ely Ratner “The China Reckoning”(2018年3・4月号)などだ。

「国家」対「自由」の溝は深い

また、欧米の自由主義のオピニオンリーダーともいえるイギリスの週刊経済新聞「The Economist」も本年4月、中国が経済発展につれ政治もしだいに民主化されるだろうという西側の「賭け」は完全に失敗したと断じた(“How the West got China wrong”)。

アメリカの産業界も中国への不満を蓄積してきた。対立する共和・民主両党ではあるが、対中国ではアメリカ企業への投資の監視強化などの厳しい対応で足並みをそろえる。欧州でも、最近では中国による企業買収や小国への政治介入などへの懸念が強まっている。

中国といち早く自由貿易協定(FTA)を締結したオーストラリアでは国内政治への中国の影響に不安が強まり、本年8月には次世代通信(5G)インフラの機器調達先候補から中国企業を除外する方針が打ち出された。党派を超え、また西側各国で中国への警戒感は急速に強まっている。

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