ついに「逆イールド」、バブル崩壊のサイン 10月に続く株価調整は「終わりの始まり」

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現状、11月以降見られるようになった一連のジェローム・パウエル議長やリチャード・クラリダ副議長の弱気発言を経て「3%と目される中立金利を大幅に超えて利上げを継続する」という10月初旬に浮上したシナリオはほぼ「死に体」という状況である。筆者はFRB(連邦準備制度理事会)の過剰な利上げ路線によってアメリカや世界の経済・金融情勢が動揺し、FRBのタカ派姿勢が修正を迫られる中で米金利およびドルが低下、これに付随して円相場が騰勢を強めるという予想を続けてきた。

上述した通り、本格的なリスクオフムードが押さえられていることもあり円高はまだ限定的だが、FRBが明確な姿勢転換をしていないことも原因だろう。この点、「FRBがハト派に傾斜すれば株価も復調するので円高(≒リスクオフ)にもなりにくい」という声を聞くこともある。これは一理あるが、見るべき時間軸の違いを混同している。FRBがタカ派からハト派に傾斜するような局面では「相応の理由」が必ずある。

FRBの利上げ到達点なら株価も高値到達点

景気減速なのか、金融市場の混乱なのか、地政学リスクの増大なのか、ケースはさまざまだろう。しかし、何らかの不安が顕在化しているからこそFRBは姿勢を転換するのであり、短期的に「慎重な債券市場」に「強気の株式市場」が追随することはよくある。FRBの利上げ到達点とNYダウ平均株価の高値到達点はほぼ同時期であることはその事実をよく表している。

要するに、「事が起きてからFRBは動く」ということであり、その後、緩和的な政策スタンスの効果がラグを伴って現れることで株価を復調させるというのが実情に近い。その復調過程で米金利もドルも下がり、円高圧力がかかるというのが円相場の経験してきた常套パターンであり、今回もその例に漏れないと筆者は考えている。

※本記事は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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