免税店ラオックスが赤字企業を買収した真意 羅社長が語る婦人靴やギフト店との相乗効果

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2018年4月に買収したギフト店のシャディ。日本同様に贈答文化のある中国での展開を狙う(写真:ラオックス)

――では、買収したギフト店・シャディの場合は?

シャディは売上高が300億円、と規模もそれなりに大きいので、2つの成長エンジンがある。1つは国内。ECはまだやっておらず、ブランドの宣伝もしてこなかったので、それらを強化する。併せて、店舗が多い地方郊外のネットワークをもっと活用したい。

2つ目は、中国向けの販売だ。中国にも、日本と同じように贈答文化があり、場合によっては、1人当たり1万円、5万円分の贈り物を用意する。ただ、贈り物の選択肢は、お酒、タバコ、お茶、月餅などと限られている。その点、シャディで扱うギフトは平均単価が数千円と安く、選択肢も多い。さらに、包装がきれいだ。中国人向けに、とてもいいコンテンツを持っている。

「成功するための戦略と武器は手に入れた」

――商業施設や飲食や劇など「コト消費」も強化し始めました。が、早速減損対象になるなど、苦しいスタートです。

コト消費関連は今年度から本格化した事業なので、まだそれなりに赤字が残っているが、改革は順調だ。

少なくとも飲食は来期黒字化できる見通しだ。2019年1~3月をメドに、訪日客向けのアプリをリリースして、人気の飲食店でも行列することなく、事前予約注文ができるようにする。これは、中国ではすでに普及しているシステムなので、日本でも導入されれば訪日客の利便性はぐっと増す。もちろん、ラオックスが展開する以外の飲食店でも使えるようにする。

羅 怡文(ら・いぶん)/1963年中国上海市生まれ。1989年に来日。1996年横浜国立大学大学院修了。2003年に全日本華僑華人連合会監事。2006年現・日本観光免税を設立。2009年から現職(撮影:梅谷秀司)

さらに、これまで日本に来た観光客しか買えなかったラオックスの商品を、越境ECや貿易などで現地でも買えるようにしていく。コト消費での情報提供と、一度撤退した中国本土への再進出。この2つが来年度の2本柱。それが成功するための武器と戦略は手に入れた。

――多くの日本企業と比べると、羅社長の意思決定スピードはとても早いように感じます。

そう言っていただけるのはうれしいが、方針が頻繁に変わるのは企業として成熟していないしるしでもある。まずは個々の事業を安定させ、盤石な経営基盤を築きたい。

――「免税店大手のラオックス」は、これから何の企業になっていくのでしょう。

一言では言えない。私は「グローバルライフスタイル企業」になると言っているが、皆さんは理解できないし、まだまとまっていないというのが現状だ。今は変化の途中だが、構造改革に一定の結果が出れば、自然に見えてくるだろう。そうすれば、自然と理解もついてくるはずだ。

(『週刊東洋経済』12月1日号「トップに直撃」に加筆)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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