免税店ラオックスが赤字企業を買収した真意 羅社長が語る婦人靴やギフト店との相乗効果
――では、買収したギフト店・シャディの場合は?
シャディは売上高が300億円、と規模もそれなりに大きいので、2つの成長エンジンがある。1つは国内。ECはまだやっておらず、ブランドの宣伝もしてこなかったので、それらを強化する。併せて、店舗が多い地方郊外のネットワークをもっと活用したい。
2つ目は、中国向けの販売だ。中国にも、日本と同じように贈答文化があり、場合によっては、1人当たり1万円、5万円分の贈り物を用意する。ただ、贈り物の選択肢は、お酒、タバコ、お茶、月餅などと限られている。その点、シャディで扱うギフトは平均単価が数千円と安く、選択肢も多い。さらに、包装がきれいだ。中国人向けに、とてもいいコンテンツを持っている。
「成功するための戦略と武器は手に入れた」
――商業施設や飲食や劇など「コト消費」も強化し始めました。が、早速減損対象になるなど、苦しいスタートです。
コト消費関連は今年度から本格化した事業なので、まだそれなりに赤字が残っているが、改革は順調だ。
少なくとも飲食は来期黒字化できる見通しだ。2019年1~3月をメドに、訪日客向けのアプリをリリースして、人気の飲食店でも行列することなく、事前予約注文ができるようにする。これは、中国ではすでに普及しているシステムなので、日本でも導入されれば訪日客の利便性はぐっと増す。もちろん、ラオックスが展開する以外の飲食店でも使えるようにする。
さらに、これまで日本に来た観光客しか買えなかったラオックスの商品を、越境ECや貿易などで現地でも買えるようにしていく。コト消費での情報提供と、一度撤退した中国本土への再進出。この2つが来年度の2本柱。それが成功するための武器と戦略は手に入れた。
――多くの日本企業と比べると、羅社長の意思決定スピードはとても早いように感じます。
そう言っていただけるのはうれしいが、方針が頻繁に変わるのは企業として成熟していないしるしでもある。まずは個々の事業を安定させ、盤石な経営基盤を築きたい。
――「免税店大手のラオックス」は、これから何の企業になっていくのでしょう。
一言では言えない。私は「グローバルライフスタイル企業」になると言っているが、皆さんは理解できないし、まだまとまっていないというのが現状だ。今は変化の途中だが、構造改革に一定の結果が出れば、自然に見えてくるだろう。そうすれば、自然と理解もついてくるはずだ。
(『週刊東洋経済』12月1日号「トップに直撃」に加筆)
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