北海道民は「JRへの税金投入」に納得できるか

方向性を示せない道庁と知事に不満の声も

高橋知事の過去3年の議会や記者会見などでの発言を調べてみたが、JR北海道の問題にあまり関心がないように見受けられる。関係者会議の欠席も多かった。

2017年3月の記者会見では、赤字補填は「国のレベルでも道においても無理」と明言した。道民に対して、維持困難8路線の存続のため税金を投入することを説明できないという趣旨のようだ。

道内の有権者の4割超は札幌都市圏に住んでいるので廃止の危機感はない。JRを利用しない人、鉄道のない自治体も多い。メインユーザーである高校生は少子化で半減し、高速道路が充実して中距離移動でもクルマ利用が中心となった。

また、道庁は80年代に道内の1500km以上の国鉄線が廃止対象となったときも、財政難を理由にバス転換へ誘導した。道出資の北海道ちほく高原鉄道の廃止を決めたときも同様で、当時、高橋知事は「ない袖はふれない」と失言して批判された。

函館線を走る貨物列車。重量級であるがゆえに線路の修繕や設備改良に巨額の費用が必要で、JR北海道の苦悩の要因となっている(筆者撮影)

そうした現状と経緯があるので、道庁は、維持困難8路線への税金投入を躊躇する。知事はJR北海道をスケープゴートにして「まずは徹底した経営努力をすべき」と不毛な批判を繰り返すことで、議会やメディアの追及から免れてきた。

ただ、JR北海道の努力にも限界がある。人件費は30年間で4割減。社員が半減し、ベースアップは15年間凍結され、定期昇給が抑えられてきたからだ。

2016年度の社員の平均年収は499万円。道内のほぼすべての自治体より低位になり、中途退職者は過去3年間で200人を超えた。地方公務員への転職が多いようだ。

鉄道以外の関連事業の売上比率はJR東日本などより高いが、収益性の高いホテルや株式、土地を赤字補填のため売却しており、今後に大きな期待もしづらい。

道庁に自治体から不満の声も

方向性を示せない道庁に反発も出ている。

11月、災害で運休が続く日高線の沿線町長の意見交換会の席に、高橋知事が初めて出席した。道の交通政策総合指針は鵡川―様似間のバス転換を示唆したが、地元では一部区間の運転再開を求める声がある。

知事は言質を取られたくないのか曖昧な発言に終始し、「リーダーシップを発揮して」「困っている道民、地域に寄り添うべき」「どのような振興策を考えているのか知りたい」と不満が噴出した。

市町村の動きも鈍い。持続困難路線を検討する会議のメンバーからJR北海道を外している地域すらある。「住民のためには欠かせない路線だ」と語るが、実態調査した自治体はどれだけあるのか。また、「JR北海道は情報開示せよ」と批判する割には、自治体の会議の多くは非公開で、住民には結論しか伝えられていない。

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