小田急の新ダイヤ、「複々線効果」は道半ば 便利になったはずが、通勤定期は目標の半分

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小田急が公表した別の資料によれば、中央林間を含む江ノ島線(相模大野―片瀬江ノ島間)から都心3駅(新宿、代々木上原、下北沢)に向かう利用者の伸びは通勤定期7.4%増、定期外が6.4%増。これらの数字が小田急の見方を裏付ける。ただ、東急側は中央林間駅での通勤客の小田急へのシフトについて「確認できていない」(IR担当者)としている。

都心3駅への利用人員のデータを、ほかの区間でも見ていくと、向ヶ丘遊園―町田間から都心3駅に向かう利用者の伸びは通勤定期2.3%増、定期外0.7%増とやや控え目な結果だった。また、相模大野以西から都心3駅に向かう利用者の伸びは通勤定期1.6%増、定期外0.6%増とさらに控えめだ。

小田急は、今春のダイヤ改正で途中始発駅の列車を増発した。通勤時の利用客増を狙ったが、都心からの距離で効果には差が出た(撮影:風間仁一郎)

一方、世田谷代田―登戸間から都心3駅に向かう利用者は通勤定期4.2%増、定期外4.6%増と高い伸びを示した。つまり、都心寄りのエリアでは複々線効果が出ているが、都心から離れるほど効果が薄れていくことがわかる。

企業の「働き方改革」に期待

先述のとおり、小田急全体では通勤定期での伸びは前年同期比1.6%増と会社側が見込む増加幅の半分にも満たなかった。この理由について星野晃司社長は、「通勤定期は最安ルートを指定して支給する企業が多いと思われる」とした上で、「”働き方改革”ということで、速達性や快適性といった側面から通勤定期のルートが選択される形にシフトしてくれればよいが、まだそうなっていない」と話す。つまり、企業側の意識が快適な通勤を重視する方向に向かえば、小田急へのシフトが進むというわけだ。

小田急の星野晃司社長は、ダイヤ改正時に利用者の新規獲得に自信を示していたが、現時点では、満足できる結果とは言えなさそうだ(撮影:梅谷秀司)

「スタートダッシュの想定が強気すぎた。まだ半年間の数字なので、今後についてはもう少し様子を見たい」というのが小田急側の見解だが、利用者の声はやや異なる。「便利、快適になった」という好意的な意見の一方で、「通勤急行はすいているが、快速急行は激混み」「千代田線に直通する多摩急行がなくなり不便になった」など不満の声も少なくない。

想定が強気すぎたと嘆く前にまず、利用者の声を丁寧に拾い集めて、満足度が高まるような運行ダイヤに修正するほうが先決だ。それが、小田急線の評価を高め、競合路線からのシフト、さらには小田急沿線への人口流入増を増やすことにつながるのではないだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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