小田急の新ダイヤ、「複々線効果」は道半ば

便利になったはずが、通勤定期は目標の半分

多摩ニュータウンの中心に位置する多摩センター駅。京王と小田急による利用者争奪戦で最も注目を集める駅だ(編集部撮影)

駅ごとの状況から見ていこう。まずは、京王電鉄・相模原線との競合が話題になった多摩センター駅と永山駅の状況だ。両駅を合算したデータは、通勤定期が4.1%増、定期外が2.6%減という対照的な結果になった。通勤定期が大きく伸びたのは、ダイヤ改正に合わせて朝ラッシュ時間帯に多摩センター始発の新宿行き通勤急行を6本新設して、座って通勤できることをアピールした結果だ。

では、定期外がマイナスになったのはなぜか。これは京王の営業戦略に影響を受けたとみてよい。京王は相模原線の建設費を回収するため、1979年から通常運賃に加算運賃を上乗せしていたが、小田急のダイヤ改正と同じタイミングで加算運賃の一部を引き下げた。多摩センター―新宿間の運賃は京王が319円になった。小田急は370円で、京王のほうが51円(約16%)も安くなった。京王を選ぶ人が増えても不思議はない。

京王の2018年4~9月期決算を見ると、定期外の輸送人員は対前年で0.1%増えたが、旅客運輸収入は1.4%減少した。「加算運賃引き下げの影響はある」と京王側も認める。値下げという捨て身の攻撃が小田急への定期外利用者シフトを食い止めた格好だ。

町田は想定ほどシフト進まず

続いて、ターミナル駅・新宿に次ぐ利用者数を誇る町田駅。通勤定期が0.6%増、定期外が0.7%減と、多摩センター駅・永山駅と同じ傾向を示した。通勤定期の利用者は増えたが、伸び率はわずか。「当初想定していたほど当社へのシフトが進んでいない」というのが小田急の受け止めだ。

小田急と乗客獲得競争を繰り広げる京王電鉄。写真は今年、同社として初めて投入した通勤ライナーの「京王ライナー」(撮影:尾形文繁)

ダイヤ改正によって混雑は緩和したものの、町田から座って通勤できる状況には程遠く、始発列車が多い東急田園都市線の長津田を利用する人を小田急線に呼び込めていないのだ。とはいえ、町田始発の列車を設定する可能性については、「ダイヤ上の制約があり簡単ではない」(小田急)。

中央林間駅は通勤定期の伸びは0%と横ばい、定期外が0.1%減だった。2017年度の通勤定期は0.9%増だったので、利用者の伸びが止まったことになる。この理由を小田急側は「中央林間で乗り降りする人が減ったからではないか」と分析する。中央林間は田園都市線の始発駅。これまで中央林間で小田急から東急に乗り換えて都心に通勤していた人が、小田急線の利便性向上に伴い中央林間で下車せずそのまま都心に向う人が増えたため、駅の乗降人員が減ったというのが小田急の見立てだ。

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