ルノーの解任決議延期要請を無視したワケ かじ取り役不在で3社連合は前途多難
投資資金や経費の私的流用も発覚し、会社を私物化していた実態が明らかになったゴーン容疑者。日産幹部の1人は「日産のステークホルダー全員に対する裏切り行為。絶対に許されない。解任は妥当」と話す。ただ、これまでの3社連合は、ゴーン容疑者の「鶴の一声」で意思決定されてきただけに、今後は意見がまとまらず、「時間がかかるのでは」と懸念する。
三菱自関係者は「ゴーン氏は経営者としては非常に優れているし、日産と三菱自が対立した時も、三菱自の意見を尊重してくれた」と、その存在感の大きさに言及している。 <日産とルノー、深まる溝>
日産の親会社であるルノーは、20日の臨時取締役会で、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を暫定トップとし、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)の解任は見送った。「解任するのに十分な情報や証拠がない」。ルノーの筆頭株主で15%を出資するフランス政府のこうした意向をくみ、疑惑の詳細が判明するまで先送りした。
フランス政府はもともと、ルノーの日産に対する影響力を強めたい意向があり、近年はゴーン会長の退任後を見据え、連合が解体しないよう不可逆的な関係構築を目指していた。一方、日産は対等な関係や経営の独立性維持を求め続けており、真っ向から異なる。
ゴーン容疑者の処遇も、ルノーは「見送り」。一方、同社が決議延期を求めたにもかかわらず、日産はこれを受け入れず「解任」。日産とルノー、フランス政府の溝はさらに深まる恐れがある。
「より対等な関係」を模索したい日産
検討を続けてきた日産とルノーの資本関係見直しも、さらに混迷を極めそうだ。現在の資本構成は、ルノーが日産に43.4%、日産はルノーに15%を出資する。ただ、ルノーは日産に対し議決権を持つが、日産はルノーに対して議決権を行使できないといういびつなものだ。
両社の資本関係は、1999年に経営危機に陥った日産をルノーが救済したことに始まるが、現在は立場が逆転し、ルノーを日産が支えている。ルノーの2017年度の純利益の約半分は、日産の業績が寄与する持分法投資利益からきている。
約20年もトップに君臨しながら、ゴーン容疑者は長年続いていた一連の完成検査不正で批判の矢面に立たず、役員報酬も自ら決めていた。3社間のあらゆる機能の共通化でも、ゴーン容疑者の息のかかったルノー出身者が責任者を務めるなど「役員選出も彼の思い通りだった」と三菱自関係者は振り返る。
別の日産幹部は「それぞれがより独立した形で、ウィン・ウィンの関係という原点に戻るべきでは」と指摘。ルノーが日産に対する出資比率を下げるなど「より対等な関係」を模索していくことを示唆した。