49歳女性が経験した引きこもりと離婚の壮絶 専業主婦の自分に納得できず職も転々とした
「私は人に何かを教えるのが苦手なんです。それでも必死に頑張ったんですが、仕事を覚えきれないうちに妊娠、出産で休みをとることになってしまって」
産休と育休をとったことでキャリアが中断、それでも1年後には職場に戻ったが、合わない部署に戻ったことと育児のストレスからうつ病になって休職。その間は家事もろくにできず、保育園の送り迎えをしたことくらいしか記憶にないという。これが最初のひきこもりだったと彼女は振り返る。ただ、根が優秀でまじめな人なのだろう、数カ月で復職した。
「娘が小学校に入ってからが大変でした。保育園のように長くは預かってもらえないから、学童保育を使って、仕事と家事と育児にフル回転。夫は仕事一途でワンオペ状態。つらかったですね」
昼も夜も学校のクラスを持たされる生活に疲れ果て、30代半ばでうつ病が再発。半年ほど休職して、とうとう転職を決意した。そしてITエンジニアとして再出発を果たす。
「企業に出向いて、パソコンのネットワークをつなげたりする仕事で、仕事内容は気に入っていたんです。ただ、社内の人間関係が合わなくて数社を転々としました。すごく無理していたと思う」
専業主婦になれず何度もひきこもる
数カ月仕事をしては数カ月家にこもるという生活が始まった。家にこもっているときは専業主婦なのだから、きちんと家事をやらなくてはと考える。ところが、例えば、片づけをしようと思えば思うほど、家が散らかっていく。もともと整理整頓は苦手だった。しかもハウスダストアレルギーになってしまったという。
私も整理整頓ができないタイプなのでよくわかる。どこから整理したらいいかわからない。場所を決めればいいと言われて片づけ始めても、そこにあるものをどこかに移動させるだけで終わってしまう。結果、こちらは片づいても移動させた先ががらくたの山になっていくだけなのだ。片づけが苦手な人間には整理整頓は拷問のようなものである。
佳奈さんは、とうとう仕事もできなくなり2009年の秋から夫の扶養に入った。だが、「何もしない自分」に我慢ができない。「夫に扶養されている」ことでさらに自分の存在価値が揺らいだ。
母に「女の子だから行動を制限された」時代を経て、結婚して自立したつもりだったはずだ。だが、またも扶養されなければいけない身になったことが、焦りを生み、「敗北感」すら抱かせたのではないか。
翌年4月からは夜間の大学院に通い始めた。夜間とはいえ、大学院にはそう簡単に受かるものではない。彼女の優秀さの表れである。だが彼女自身は、「なんとかリア充を装うのに必死だったのかもしれない」と振り返る。